Heart Rules The Mind

Novel Dairy Profile Link Mail Top

NOVEL

conviction  crime 
As for this wonderful work, from michi
It got it as a celebration of Shinichi's birthday and the first anniversary of my homepage.
Thank you very much.It appreciates it.   
2002.05.04

 

 

近くにあるビルを中心にして夜空を照らすサーチライト。

そして、俺がいるビルとは反対方向に向かって行くヘリ。

………相変わらずだな、中森警部。

くすり、と小さな笑みを唇に浮かべる。

警察の力だけじゃ俺を追い詰めることなんてできやしないって、いい加減気付けよ?

俺を追い詰めることができるはたった1人。

彼以外じゃ、ニアミスさえもできねーよ。

だが、その彼は今日も警備には参加していない………

 

 

カツン、と小さな音が響いて、次いでゆっくりと開かれる扉。

「よぉ」

月の光を浴びながら目の前に現れた彼は、Tシャツにブラックジーンズというラフないでたち。

警察に協力するときには絶対にしない服装。

「ようこそ。名探偵殿………」

不敵に笑う彼を、やはり同じ笑みで迎える。

ただし、少しの敬意と、多くの愛しさを込めて。

 

 

「ったく。事件の最中にあんなもん渡すなよな?」

少し拗ねたように名探偵が不満を口にする。

今日どうしても会いたくて、昨夜彼が事件の謎解きにかかっているときに、彼の身近にいる刑事に変装して近づいた。

そして捜査資料の中に1枚の封筒を混入して手渡した。

名探偵が気付くころには本物の刑事と入れ替わっていたけれど。

封筒の中身は、今日のこの時間にこの場所に来てくれるための招待状。

もちろん名探偵が気に入るように、暗号で書かれたそれ。

 

 

彼の右手をとり、恭しく手の甲に口付けを落とすと、その体勢のまま上眼遣いにニヤリと笑った。

「でもちゃんと解読してくれたんだろ?

ここにいるのがなによりの証拠だもんな?」

「……ヒマだったからな」

少し赤く染まった頬を隠すようにそっぽを向く彼。

……そんな可愛い反応すんなよな?

からかいたくなるじゃねーの。

「ヒマ、ねぇ?

昨夜からずっと事件にかかりっきりだったのに?

解決したのは今日の昼過ぎだっただろ?」

「っっ!!るっせーよ!!眠くなかったんだよ!」

最後には「悪いか!!」との捨て科白付き。

全く。

お前を信奉してる警察連中に見せてやりたいね。

この態度のでかさと、口の悪さ。

ただし、気を許してる相手限定だから、こういう態度をとられると少しの優越感を感じるのもホントだけどな。

 

 

横を向いてしまった名探偵の頬に手を添え、その視線を俺に戻す。

気の強さが表れた、まだ少し不機嫌そうな瞳。

「顔色がよくないな」

暗闇の中ではっきりと映し出されることはないけれど、少し疲労の陰が見え隠れしている。

どうせまた事件にかかりっきりで不摂生な生活をしているに違いない。

「春になると、頭にも花が咲く奴が多いらしくてさ。

くだんねぇ事件が増えんだよ」

………下らない事件のせいで、最近俺のショーには参加してくれないのかと思うとかなり淋しいものがあるんですけど?

その不満が少し表情に出てしまったのか、名探偵がくすり、と笑う。

その顔は、月の光を浴びて妖艶に俺の眼に映る。

「しゃーねぇだろ?

1課に呼ばれちまったらさ」

そりゃあね。

1課は名探偵が普段から懇意にしてるヒトたちばっかりだし。

判ってはいるけど、少しの理不尽さを感じるのも事実。

「ばーろ………」

名探偵の頬に沿えたままだった手が、彼の手に掴まれる。

「オレだって、残念に思ってんだぜ?」

そして、不敵な笑みを浮かべたまま俺の掌に軽いキス。

 

 

………毎度毎度思うんだけど、こういう不意打ちは心臓に悪い。

実はこいつってかなりの確信犯だと思うんだよなぁ。

その眼で。

その笑みで。

飽きもせず俺を縛り付ける。

 

 

「なーんてな」

不覚にも見惚れてしまってる間にするりと俺の腕の中から名探偵が抜け出した。

 

 

………はい?

「さっきのお返し♪」

今度は妖艶さなどかけらも感じさせない、悪戯っ子のような表情。

「さっき、さんざんからかってくれたからさ」

「……それはお返し、じゃなくて仕返し、なんじゃあ……?」

「おめーがそう感じんなら、そうかもな?」

さらり、と言いのける。

そして、その直後に軽い欠伸。

「ホントにお疲れのようだな」

昼過ぎまで事件で、それから暗号の解読。

今はもうすぐ日付の変わる時間だ。

そりゃ疲れもするか。

「なら、わざわざ呼び出すなよな?」

目つきも悪く、睨みつけられた。

「仕方ないだろ?今夜の仕事終ってから名探偵のとこ行ったんじゃ、今日中に間に合わなかったからさ」

そう言うと、何かに気がついたのか、視線がさらにキツクなった。

う〜ん。

相変わらず、いい勘してるね♪

「………てめぇ、まさか………」

「そう。ご明察通り♪」

ぽすん、と軽く腕の中に閉じ込める。

名探偵は抵抗する元気もなくなったのか、大人しく腕の中に納まっている。

 

 

「誕生日、おめでとう」

 

 

耳元でそっと囁くと、腕の中の身体が少し体温を上げたのが伝わってきた。

「………ホントにそのためだけに、オレを呼び出したってのかよ?」

「もちろん」

悪びれずに答える。

「さっきも言っただろ?

こっからお前んちまで飛んでいっても、どうやっても日付変わっちまうからさ。

だから今日中に言おうと思ったら、本人にこっちに来てもらおうってね♪」

「………オレは昼過ぎに事件が解決したばっかで疲れてんだけど?」

いつもよりも声のトーンが低い。

だけど怒っているのではなく、どちらかと言えば拗ねている、といった口調。

「知ってる。

だから来るか来ないかはお前の自由だったんだぜ?」

自分でも相当意地の悪い言い方をしている自覚はある。

名探偵が自分に宛てられた暗号を前にして、背を向けるはずがないと判っていた。

「………確信犯め」

先ほど俺が名探偵に対して思ったのと同じことをそのまま返された。

「俺は怪盗だからね」

それに名探偵ほどタチ悪くないし。

 

 

腕の中にある体の感触を楽しんでると、不意に彼の腕時計のアラームが鳴った。

5月5日になったらしい。

 

 

その音に、我に返ったのか、名探偵が身体をゆっくりと離した。

「……5日か……

んじゃ、日付も変わったことだし。

帰って寝るかな。

おめーの用も済んだんだろ?」

あっさり言われるとなんだか少し淋しい感じ。

………まぁこういうヒトなんだって、判ってるけどさ。

なんの未練もないような様子で非常階段へと続く扉に向かう。

「あ、そーだ」

ノブに手をかけたところで、名探偵が不意に振り返った。

どうしたんだろ?

 

 

「お前、今日の夜うち来いよ?」

 

 

は?

至極珍しい名探偵からのお誘い。

そりゃ、断るわけなんかないけど。

 

 

ちょっとマヌケな表情のまま、とりあえず肯定の意を返すと、彼は満足そうな笑みを浮かべて今度こそ背中を向けて歩き出した。

肩越しにひらひらと振られる彼の手。

 

 

続く名探偵の言葉を聞いて、俺は今日の駆け引きの負けを思い知らされることになった。

 

 

「遊んでやるよ。今日は子供(キッド)の日、だからな」

 

 

The End

 


みちさまよりいただいて(=奪い取って)しまいました〜vvv
新一さん、ハピバ小説!!

すばらしいです。みちさま!!
ああ、こういう2人の甘い駆け引きってステキvvv

私には決して書けない、すてきなお話をどうもありがとうございました。
今日、(2002.05.04)は、新一さんのお誕生日でもあり、
当サイトのオープン一周年でもあります。

そのお祝いにいただいた小説をそっくしそのままUPさせていただきました。

本当にありがとうございました。みちさま。

いえ、だってね。私、新一さんのハピバ小説UPできてないんですもの・・・・。

By ririka

 


Copyright(C)ririka All Rights Reserved.   Since 2001/05/04