Heart Rules The Mind

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NOVEL

 

愛しい かれん
受賞 おめでとう
今宵 君の心を射抜き
僕の操り人形にしてあげよう
逆らえば 『死』 あるのみ



 

パーティ会場の照明が落ちる。

司会者の紹介とともに、ステージだけが眩しくスポットライトで照らされると、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。

深い霧のようなスモークが立ちこめる中、奈落の底から真紅のドレスを纏ったかれんが現れる。

だが、一見して尋常ではないその様子に会場内はざわついた。

ワイヤーに吊るされている彼女の姿勢は明らかに不自然で、生気がなく、まるで人形の様。

そう。

あの脅迫状に記されていたとおり、本当に操り人形のようだったのだ。

 

 


工藤新一の復活〜 黒の組織との対決〜  act.3


 

 

・・・様子がおかしい。

新一がそう眉を潜めた間にも、ぐったりとしたかれんの体はワイヤーがステージ高くへとつり上げて行く。

やがて、何かの弾みでワイヤーが切れると、彼女は壊れたマリオネットのように舞台に叩き付けられた。

パーティ会場に悲鳴が上がる。

あたりは騒然となった。

「・・・おい、あれっ!」

ステージに横たわるかれんを快斗が指差す。

その胸には、深々とナイフが刺さっていたのだ。

生中継していたTVカメラのモニターにも、しっかりとその様子が映し出される。

空を見つめるかれんの瞳は、既に死を物語っていた。

動揺したTVスタッフが慌ててカメラを切り替えた時、新一は目を見開く。

モニターに映ったのは、逃げ惑うパーティ客と逆流して会場内に入ってきた灰原哀の姿。

人目にさらしてはいけないその姿を、よりにもよって生中継のカメラに捉えられてしまったのだ。

ちょうどその時扉が開いて、阿笠博士が入ってくる。

それに気づいた新一はすぐさま博士に駆け寄った。

「・・・博士っ!」

「す、すまん!新一っっ。目を離した隙に哀君が・・・・!」

「いいか!ここから誰も出すな!殺人事件が起きたんだっっ!!」

とりあえず、新一は博士に会場の出口を封鎖させると、人ごみをかき分け哀のもとへと走った。

 

哀は食事の置かれているテーブルの傍に佇んでいた。

その細い腕を掴んで、新一は乱暴に振り向かせる。

「何で戻ったっっ!?」

「このケーキを取りに来たのよ。成分を調べれば、もしかしたら・・・」

言いかけている哀の頭に、新一は着ていたジャケットを脱ぎ捨て被せる。

「何するのよ。」

「生放送のテレビに映った。この番組の視聴率予測はおよそ20パーセント。5分の1の確立で、お前は黒尽くめの奴らに居場所を知られる事になる。とにかく、一刻も早くこの場を離れろ!」

けれども、哀は新一に従おうとはせず、そのままジャケットをつき返した。

「嫌よ。このチャンスを逃すわけにはいかないわ。」

「奴らがもう、こっちに向かっているかもしれないんだぞっ!」

「・・・貴方、いつまで子供のままでいるつもり?工藤新一に戻りたくはないの?」

 

切迫した様子の新一達を、快斗は離れた場所からじっと見つめていた。

快斗には直接二人の会話は届かなかったが、その口元だけで実は話の内容を完全に把握していたのだ。

快斗の目が興味深そうな色を浮かべる。

・・・彼女、何者だ?

話し振りからして、彼女が新一の秘密を知る人間だということがわかる。

しかも、どうやら彼女も人目に姿をさらしてはいけない事情があるらしい。

・・・そういえば、あの顔。見覚えがあるな。

江戸川コナンとなってしまった新一の周囲に、少年探偵団と称する子供達がいたことは快斗も知っている。

その中の1人に、彼女と良く似た面影の少女がいたことを思い出した。

・・・ああ、なるほどね?要するに、彼女も名探偵と同じクチなんだ?

快斗はニヤリとした。

勘でしかなかったが、快斗は新一と一緒にいる彼女が“灰原哀”の元の姿なのだろうと確信したのだ。

 

不意に背後に感じた視線に、哀は振り返る。

と、そこには1人の少年が微笑みを浮かべてこちらを見ていた。

哀の向いた方向に新一も目を向けると、快斗はにっこり手を振って返した。

その様子に哀は眉を寄せる。

「・・・彼は?知り合いなの?」

「・・・ああ、前に関わった事件でちょっとな。さっき偶然バッタリ会っちまって、捜査を一緒に手伝ってもらってるんだ。」

「正気?いつ子供の姿に戻るかわからないのに、他人と一緒に行動するなんて。」

「わかってるよ。ただオレも人目につくとこじゃ、動き難いからな。協力者がいた方がやりやすいと思ったんだよ。」

「だったら、私が・・・」

協力者なら自分が1番適任ではないかと言おうとして、哀は言葉を飲み込んだ。

快斗が傍へ寄ってきたのである。

快斗は哀に一度目をやった後、笑顔を作って新一に言った。

「ホテルの人には、警察と救急車を呼ぶように言っておいたよ。」

「あ、ああ。サンキュ。」

「・・・で、初めまして?オレ、黒羽快斗。このパーティには、マジックを披露する為に呼ばれてね。今は、名探偵の助手をやらせてもらってるんだけど?」

軽い自己紹介と一緒に差し出された快斗の手を、哀は怪訝そうに見つめ返す。

そんな哀に代わって、新一が答えた。

「・・・ああ、えっと。コイツもいろいろ事情があって、素性は明かせないんだ。悪いな。」

「・・・へぇ?ま、別に構わないよ。」

───彼女が誰だか見当はついてるしね。

そんな心の内は隠して快斗は微笑むと、肩越しに振り返る。

「それより、そろそろ出入り口がヤバイみたいだけど?」

快斗に言われて新一も見ると、そこは会場を出ようとしているパーティ客でごった返していて、阿笠博士はもみくちゃにされていた。

このままでは会場から人が出てしまう。

新一は小さく舌打ちして、それから哀を見据えた。

「いいか。とにかくお前は博士と一緒に早くここから逃げろ!」

そう言い残すと、新一はパーティ客で押し合いへし合いになっている出口へ走っていく。

人ごみに消えていく新一を、哀は冷ややかな目で見据える。

そして新一が消えたのをいいことに、哀はそのまま会場奥へと駆けて行く。

1人その場に残された快斗は、腕組みしたまま黙って見送った。

「・・・ふーん?大人しく逃げるつもりはないわけだ?」

そう微笑を浮かべて。

 

 

 To be continued

はいv 実はこの話で、快斗は哀ちゃんの正体に気づくというそんな話にしちゃいました。
新一の正体には気づいていても、哀ちゃんの正体を知る機会ははっきりしてなかったんで
この話にしちゃおうかと。まぁそれもありってことで(笑)。
 


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