Heart Rules The Mind

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NOVEL

This story is the work which nonfiction mixed with based on ririka's actual experience with the fiction


    The third long-awaited special project   関門海峡ミステリーツアー
                                            

♪ If Shinichi,Kaito & Ai join this tour Version ♪   【後編】


 

新一達一行は高速道路をかっ飛ばし、関門橋を渡って門司港エリアへと突入した。

門司は貿易が盛んだった港で、ネオ・ルネッサンス様式や、赤レンガ造りや西洋建築の建物が点在し、
当時の面影が色濃く残る場所で、この一帯が『門司港レトロ地区』と呼ばれている。

で、ミステリーツアーの門司周辺の捜査は、この『門司港レトロ地区』を回ることによって行うわけだ。

ちなみにここは全て徒歩での散策。

なので、車はレトロ地区そばの駐車場に入れ、3人は歩いて捜査を開始した。

 

「・・・ふーん。確かに古めかしい建物があるわね。ちょっと横浜みたい。」

哀はレトロな建物を見上げながら、そう呟いた。

「あ!あれが見ろよ!はね橋が今、ちょうど上がってるぜ?」

と、新一が指差したのは『ブルーウィングもじ』と呼ばれる第一船だまりにある歩行者専用のはね橋。

時間帯によって開閉が行われている。

ちなみに今は上がってしまっているので、その橋を渡ることはできないのだが、景色的には上がっている方が
ナイスな感じだ。

 

「・・・で、どこから回るの?」

「まずは、門司港エリアのスタート・ポイントでもある『旧大阪商船』からだ。」

「ほら。あのオレンジ色のタイルに八角形の塔の建物だよ!」

 

と、そっち方面に向かって歩いて行ったのだが、前方に不思議なものを見つけて、哀は僅かに眉を寄せた。

どう見てもバナナである。

いや、思いっきり作り物で、しかも等身大のバナナの形をした人形が銅像のようにポーズを決めて立っている。

 

・・・・・・・・何かしら?アレ。

 

「わぁ!見ろよ!新一!!『愛と正義の使者・バナナマン』だって!!」

「・・・・っていうか、誰だよ?それ。」

「・・・・近くで見ると、結構グロテスクね。」

 

バナナの人形と言えばかわいいのを想像してしまうのかもしれないが、そのバナナマンはバナナの被りものを
被ったオヤジの人形なので、お世辞にもカワイイとは言えない。

だが、こんなバナナマンに逢えるのも、きっとこの門司港だけ。

そう言われてみれば、門司はバナナの叩き売り発祥の地だそうで。

確かこのツアーで門司に行くと告げた時、門司がバナナで有名だと言う事を光彦が力説していた事を
哀はふと思い出した。

 

・・・・探偵団の子達に見せたら、ウケそうね。

 

哀はカメラを快斗に持たせると、恥ずかしいのでさっさと一枚だけ写真を撮るように申し出た。

後ほど哀がカメラマンとなり、快斗&新一を撮ってやったのだが、バナナマンのキメポーズと同じポーズを
あっさりキメてしまうあたり、さすがは怪盗というべきだろう。

バナナマンと腕を組んで微笑む新一もどうかと思うが。

そうして、バナナマンにお別れを告げると、途中の売店でバナナジュース等を買い食いしつつ、
一行は『旧大阪商船』へと向かった。

 

『旧大阪商船』とは、大正時代の建築物で、かつては大陸航路の待合室として大勢の旅行客で
賑わっていたという、そんな場所だそうだ。

で、今は海事資料館やイベントホールとなっているらしい。

 

とりあえず、入り口へ向かうと、もうこのツアーではお馴染みのツアー・ボードが出迎えてくれた。

オマケにレトロ地区では『旧門司三井倶楽部』と『旧門司税関』を回れとのメッセージ付きだ。

 

「『旧門司三井倶楽部』って、このすぐ隣の建物じゃねーかよ。」

「・・・だね。で、門司での捜査ポイントはこの2つってことか。」

「そうなると、やっぱりこっちのシークレット・ポイントは『門司港レトロ展望室』で、まず間違いはないわね。」

 

ふーむと3人でボードを前に語っていると、『旧大阪商船』の係りのおじさんがフイに現れてこちらへやってきた。

「どうしたね?君達。何か観光でわからないことでもあるのかな?」

この場合、一般の観光客とは新一達が異色なことに彼が気付いていたのかどうか。

とりあえず、その場は苦笑いだけして去り、さっさと次の捜査ポイントへと向かったのだった。

 

と、いうわけで次に行ったのは、『旧門司三井倶楽部』という建物。

ここは三井物産が社交クラブと使用していた迎賓館で、かのアインシュタイン夫妻も宿泊した事があるらしく
その部屋は今もメモリアル・ルームとして公開されているそうだ。

 

早速、中に入ればここが捜査ポイントであることを示すクイズ・ボードとご対面。

クイズはともかくとして、問題はヒントだ。

 

「・・・・・これは・・・・。」

新一は秀麗な眉をやや寄せて、ヒントとして掲示されている『人道トンネル』での監視カメラの映像を
睨みつけた。

その隣で哀も小さく溜息をつく。

「・・・これじゃ、あまり有力な手がかりにはなり得ないわね。大方、予測できていた範疇のことだもの。」

「・・・・ま、とりあえず、クイズ回答のために上の階を見て回ろっか。アインシュタイン博士の泊まった部屋にさ!」

快斗に促されて、新一と哀はヒントの前から離れると2階へと上がった。

 

2階は、さすがアインシュタイン博士が泊まっただけあって豪華な客室だった。

新一も快斗もアインシュタイン博士には少し興味があったようで、クイズの回答を得た後も他の部屋を
見て回ったりしていた。

 

その後、もう一つの捜査ポイントである『旧門司税関』へ向かうために、再びバナナマンの前を通過。

この辺りはちょっとしたお土産屋さんで賑わっているので、一行はとりあえず門司での土産物を物色。

それぞれ学校へ配るお土産をチョイスすることにした。

お互い学校をサボってきているだけに、こういった気配りは忘れてはならない。

快斗は学校へ配るお土産よりも、自分と母親が食べるためのお土産選びに苦悩していたようであるが。

 

「このフグの形のおしるこ、カワイイだろ?うちの母さんこういうの大好きなんだよ。オレも好きだけどv
学校にもこれにしようかな?こういうのの方がクラスの女子にはウケがいいよなぁ?
どう思う?哀ちゃん!!」

「・・・・さぁ。私、おしるこには興味がないから。」

 

灰原 哀はあずきがあまり得意ではなかった。

 

そうして、3人はお土産を買い終わると次なる捜査ポイント『旧門司税関』へと足を進めた。

『旧門司税関』は、明治時代の建築でどっしりとしたレンガ造りの建物だ。

館内にはエントランスホール、喫茶室、休憩室にギャラリー等があり一息入れるにはお勧めのスポットらしいが
捜査のために、クイズとヒント・ボードに直進する新一達なのであった。

相変わらず、クイズについては問題ない。

というか、シークレット・ポイントについてはもう既に確定している。

だが、問題は・・・。

 

「・・・・受付のお姉さんに合言葉を言って、ヒントをゲットしろだと?」

「しかも、その合言葉って、このツアーブックのストーリーに沿ったものなのね・・・。」

 

そう。

だが、『合言葉』は単なる『合言葉』ではない。

立派な台詞だ!

つまり、まるで本当に捜査をしているようなこの『台詞』を、『旧門司税関』の受付のお姉さんに
言わなければならないと、そういうことなのである。

 

・・・・それは、かなり恥ずかしい。

 

今まで、ツアーブックやクーポン券を掲げるだけで軽くこなしてきたが、ここへ来てそんな課題が課せられるとは。

ヒント・ボードを見ながら、しばし固まる3人であった。

 

・・・・・一体、誰がこの合言葉を言うわけ?

・・・・悪いけど、私は遠慮させてもらうわ。 あとは頼んだわよ?工藤君、黒羽君。

 

哀がそう視線を送る中、新一と快斗はどっちが受付のお姉さんに合言葉を言うかでもめていた。

 

「こういうのは役回り的に快斗だろ?お前が聞いて来い!」

「ええ?オレ?新一こそ、普段からこういうの聞きなれてるだろ?捜査の一環だと思えば何て事ないって!」

「バーロー!あれは本当の事件捜査の場合だろうが!これはゲームだろっ!!
オレには無理だ!恥ずかしすぎる!!」

「まぁまぁ、ちょっとしたお遊びだと思ってさ!」

 

哀が思うに、この場合、こういったことを引き受けるのに適しているのは快斗だ。

というか、快斗本人の人格から言って、引き受ける事など容易いことであり、いや、むしろ好んでやりそうなものなのに
ここまで、敢えて自分でやろうとしないのは・・・。

 

・・・・・工藤君をイジメて遊んでるわけね?

もしかして、これは『唐戸市場』の仕返しだったりするのかしら?

 

と、まるで自分には関係ないような顔をしていた哀は、キッとこっちを振り向いた新一と目が合う。

「そうだ!灰原!お前が聞いて来いっ!お前なら子供だし、そう恥ずかしくもないだろっ!!」

まさか自分にまで火の粉が飛んでくるとは思っていなかったので、哀は一瞬焦ったが、
さっさと新一達に背を向けると、

「・・・こめんなさい。私にはそんな合言葉は長すぎて、とても覚えられないの。」

と、言い残してその場をさっさと逃げた。

「ウソつけーーーーっっ!!」

新一の声が館内に響いたが・・・。

 

そうして、結局、誰が受付のお姉さんに合言葉を言うのか、明確に決定していないまま、3人は受付へと向かう。

受付前でモジモジしている3人は、それだけでツアー参加者だと物語っているようなものだが
お姉さんはあくまで合言葉を言わなければ、ヒントを話してくれない。

 

「・・・おい、快斗。早く合言葉を言えよ!」

「何で?新一こそ、どうぞ!」

「やっぱり、灰原!お前、行け!」

「イヤよ!」

「もう、仕方ないなぁ!」

 

すると、快斗はにっこり笑って一歩前に踏み出し、お姉さんに向かってサラっと合言葉を言った。

合言葉という名の台詞をまるで、台本のように。

さすがは、天下の大怪盗!

 

と、確かに怪盗にも拍手なのだが、驚くべきは受付のお姉さんだった。

彼女はたった二言三言ではない、長〜い目撃証言の台詞をとくとくと語ってくれたのである。

 

・・・・・すご過ぎ。

このお姉さんも。 そして、ここまでさせるこのツアーも。

 

哀は感心しすぎて、もしかしたら肝心な彼女の証言を聞き逃したかもしれなかった。

 

「・・・・すごいですね。その長台詞、全部覚えているんですか。」

証言をし終わった彼女に向けて、新一がそう問うと、彼女は『自分はただ事実を証言しただけだから』と
答えた。

見事な徹底振りである。

 

とにもかくにも、受付のお姉さんから頂いたヒントを念頭に入れた一行は、門司エリアでの最後の捜査地点、
シークレット・ポイントでもある『門司港レトロ展望室』へと向かった。

門司港レトロ地区や海峡を一望できるこの展望室。

普通なら、美しい景色を楽しむはずなのに、違うところを一生懸命見ているのはミステリーツアーご一行のみ。

 

「いいか、灰原。こういう展望室がシークレット・ポイントっていうことは、何処かしら上から眺める景色の中に
ヒントが隠れていると言っても過言ではないからな。しっかり探せよ?」

「・・・・え。」

「そうそう。きっと、建物の屋根の上とかさ。トリックがありそうなトコに注目しないとな!」

 

・・・・・そうなの?

でも、いくらなんでもそれじゃやりすぎなんじゃ?

 

新一の言葉に首を傾げた哀だったが。

それはまさに真実だった。

 

とある建物の屋上にデカデカと張り出されたツアー・ヒント。

ツアー参加者ならありがたいそのヒントは、一般の観光客にとってしてみれば意味不明の文言だろう。

アレについての問い合わせとか、あるいは景観を損ねるとかいう苦情は殺到しないのだろうか?

思わず、哀は余計な心配までしてしまったが。

 

とりあえず、ヒントの指示どおりに動くと、一枚のカードを手に入れる。

それは先にもらっていたシークレット・カードの謎の文章を解き明かすヒントその@だった。

 

「・・・・っていうか、あの文章ならとっくに読めてるんだけどな。」

「・・・・そうだね。まぁ、せっかく来たんだから、少し景色でも眺めていこうよ。
ほら、夕日がきれいだよ?新一。」

落胆する新一の肩を快斗が軽く抱き、窓の方へと連れて行く。

 

哀は景色もさることながら、やはりツアーヒントをデカデカとはってある建物に目が釘付けだった。

 

 

そうして、門司港エリアでの捜査を無事に終えた一行は再び車に乗車すると、また開門橋を渡って
下関側へ戻ってきた。

3人をのせた車は、日も翳り始めた海沿いの道を走る。

 

「・・・で、最後に下関エリアのシークレット・ポイントの『海峡ゆめタワー』へ行って、捜査終了なわけね?」

「そう。『海峡ゆめタワー』は日が暮れた方が、キレイにライトアップされるしさ。
そこからみる景色もいいかと思って。ついでにいうと、哀ちゃんご指定のフグ料理も周辺のグルメショップで
食べられるから・・・・。」

「そう。ありがとう。」

哀はにっこりと笑って見せた。

「おい。『海峡ゆめタワー』が見えてきたぞ!」

 

『海峡ゆめタワー』の周辺には特に他に背の高い建物などないので、余計に目立つ。

タワーは頂上が球形で総ガラス張りなっており、そこが展望室となっている。

 

「うーん。専用駐車場は『海峡ゆめタワー』のビル内か。入れるの、面倒だな。」

車を走らせながら、新一が言った。

「んじゃ、この辺に路駐する?道もだだっ広いし、他に車もそう走ってないしさ。
全然平気そうじゃん?」

「ああ、でもさっき、下関警察署が近くにあったろ?ヤバくないか?」

「なら、あの『海峡ゆめタワー』前の駐車場はどう?」

哀が指差したそこは、確かに『海峡ゆめタワー』の入り口に近く便利なところにある。

だが、そこは観光客に開放された駐車場ではなかった。

近くに行ってみると、『海峡ゆめタワー』関係者が使用するような専用駐車場のような文言がある。

「・・・ま、ここでいいか。そう長居するわけでもないしな。」

一行はそう深くは考えずに、車をその駐車場へと停めたのだった。

 

『海峡ゆめタワー』は、平成8年に開門海峡の新しいランドマークとして誕生し、最上階展望室の高さは
143mで、西日本一の高さを誇ると言う。

エレベーターで展望室へ上がると、関門海峡や巌流島、そして九州の連山と360度の雄大なパノラマが
一望に広がった。

ところで、偶然なことにこの広い展望室を3人はほぼ貸切状態で満喫することができた。

景色に夢中になっている新一達をよそに、哀は一人売店へと向かう。

タワー入り口に書かれていたボードには、展望室の売店へ行けとの指示があったからだ。

 

展望室の窓に張り付いて景色を眺めていた新一が、うーんと右腕を伸ばして伸びをした。

「運転ご苦労様だったね、新一。疲れちゃった?」

快斗は言いながら新一の背後に回り、その両肩を軽くマッサージしてやる。

「・・・ん。まぁ、今日は早起きだったからなぁ。メシ食ったら眠くなりそうだ・・・。」

小さく欠伸をしながらそう言う新一を、快斗はクスリと笑ってそのまま抱きしめた。

「まだ寝ちゃだめだよ?食事が済んだら、この後、関門海峡の夜景を観に行くんだからさ。」

「夜景?」

「そ。オプションでね。バスで行く夜景観光ってのがあったから付けといたんだ。
『火の山』山頂から関門海峡を観るんだぜ?」

言いながら、快斗は新一の耳元に唇を持って行き、ぺろりとその先でなめる。

「・・・こっ!こらっっ!!やめろっ!何しやがるっっ!!」

ジタバタする新一を後ろから押さえ込んで、快斗はクスクス笑っていた。

 

 

「・・・・で、その関門海峡夜景観光には、私も行っていいのかしら?」

 

 

突然、背後から響いた声に新一も快斗もギクリと固まり、やがて引きつった笑顔で振り向いた。

「・・・や、やだなぁ。当たり前だろ?哀ちゃん。みんなでバスに乗っていくんだよ?」

「・・・あ、えーっと。そうだ!ここでのヒントは・・・。」

慌てて快斗を突き飛ばし、新一はその場を去ろうとする。

それを遮るように、哀は新一の目の前に一枚のカードを差し出した。

「はい、コレ。 例のシークレット・カードの暗号解読のヒントそのAってとこよ。貴方には不要だったわね。」

「何っ?それしかないのか?!」

「ええ。これで終わり。」

哀からカードを奪い、カードを一通り目で追った新一は、がっかりしたように快斗に託す。

快斗は苦笑すると、それまで背もたれに預けていた体をよっと勢いをつけて起こした。

「それじゃ、ゆめタワーも満喫したことだし、ご飯にしよっか!」

 

そうして一行は隣接しているビル内のグルメショップで、哀の希望どおりフグを堪能することになる。

もちろん、快斗だけは別メニューであったが。

おいしいフグ料理に舌鼓を打ち、充分休息を取った3人は、たいそうご機嫌で店を出た。

 

「結構、長居しちゃったなぁ。」

「そうだな。」

「・・・で、こんなに呑気にしてたら、車がなかったりしてね。」

 

そう。

車は正規の駐車場に入れていない。 見つかったら、罰金だったりしても不思議な話ではないのだ。

 

だが、一行は何の心配も無く、駐車場へと向かった。

車はもちろん先に停めた場にきちんとあり、特段変った様子もない。

それぞれ定位置に乗り込むと、新一は車を発進させた。

 

が、しかし。

 

「・・・・げ。出られねぇ!!」

駐車場出入口まで来て、新一はブレーキをかけた。

一箇所しかないその車の出入口には、先程にはなかったポールにチェーンがかけられていたのだ。

駐車場に戻ってきた時は、人専用出入口から来たために、そのチェーンの存在になど気付かず
安心して車に乗り込んだのだが。

見たところ、チェーンはポールにロックされているようだ。

 

「まさか、ロックされてるとはね。じゃ、外してくるか。」

言うなり、快斗は車から降りて、さっさとチェーンを外しにかかる。

 

怪盗がロックを解除している様子を、新一達は車の中から見守っていた。

「・・・快斗がいて、助かった。レンタカーじゃチェーンを引きちぎるわけにもいかないからな。」

「・・・ほんと。便利ね。彼って。」

 

 

その後、3人は海岸沿いの道をドライブして楽しんだ後、レンタカーを返却。

駅から夜景観光のバスに乗り込み、『火の山』山頂から美しくライトアップされた関門海峡に酔い痴れたのだった。

 

 

ホテル到着は、夜九時過ぎ。

ホテル入り口にもミステリーツアー客を出迎えるボードがデカデカと掲げられていた。

チェックインを済ませ部屋に行くと、既に和室に布団が仲良く三つ並んで敷かれていた。

 

 

「・・・・それで。結局、どうなわけ?」

「いや、どうって言われてもなァ。」

「どうも、コレっていう決め手に欠けるような気がするね。」

3人はお茶をすすりながら、テーブルの上にツアーブックと、今まで各捜査ポイントで手に入れたカードなどを
広げて、うーんと唸っていた。

とりあえずは、手がかりをもとにの推理タイムと言ったところだが。

 

「・・・疑わしい人間なら、充分に浮かび上がってはいるわよね。 工藤君はどう思うの?」

「・・・うーん。けど、何か調子が狂うんだよな。やっぱ本物の事件じゃねーしさ・・・。」

「だね〜vv」

 

シークレット・カードを持ったまま布団に寝転がる新一へ、快斗がフザけて覆い被さる。

 

「うわ!何すんだ!快斗!!重いだろ!!」

「いや、お疲れの新一に、全身マッサージでもしてあげようかとv」

「バカ言ってんな!どけ!!」

「遠慮すんなって、新一v」

 

その光景に哀は小さく溜息をつくと、彼らの体を跨いでクローゼットからお子様用の浴衣を取って
振り返った。

「私、先にお風呂に行かせてもらうわね。」

「・・・お、おうっ・・!」

「行ってらっしゃいv ごゆっくり〜vvv」

 

そんな二人を冷たく一瞥すると、哀はそのままバスルームの方へ歩き出す。

ドアノブに手をかけたところで、新一達に背を向けたままクスリと笑った。

 

「じゃ、貴方達、しっかり推理を頼むわね。
私は、関門海峡の名産品、『ふぐ刺しセット宅急便』を手に入れるつもりだから。」

 

それだけ言い残し、哀はバスルームに消えた。

 

 

「・・・・・新一。哀ちゃん、犯人を当ててハガキで応募するつもりだぞ?」

「・・・・・みたいだな。」

 

二人はクスリと笑い合った。

 

「・・・仕方ねぇな。まともに推理しといてやるか。おい、快斗。今日の捜査ポイントから削除した箇所が
幾つかあるだろ。お前、ちょっくらそこへ行って、ヒントがほんとになかったか確かめてこいよ?」

「ええっ??今から?だったら、新一も行こうぜ?!」

「やだ。 オレは運転で疲れている。 お前ならグライダーで飛んできゃ、すぐだろ?」

「新一ィィィ・・・。」

「オレはここでもう一度、カード類に目を通して推理しておくから。じゃ、がんばれよ?快斗!」

 

 

その後、快斗が一人で夜な夜な捜査に行ったのかどうかは謎であるが。

 

 

翌朝。

二人より一足先に目覚めた哀は、新一によって犯人の名前と、その犯人を特定した決め手が
しっかりと書かれた3枚の応募はがきを発見した。

応募者氏名欄がまだ空白であることを確認すると、哀は3枚ともにスラスラと自分の名前を書き
ホテルのフロントへと持っていく。

 

・・・・だって。

いくら正解だったとしても、抽選なんですもの。

確立は高いに越した事ないわ。

 

 

何も知らずにまだ寝こけている名探偵達をみて、哀は一人微笑んでいたのであった。

 

 

 

☆ The end ☆


名探偵コナン・待望のスペシャル企画第3弾!
関門海峡ミステリーツアー!!

捜査終了・・・したんですけど。
はっきりいって、犯人であろう人物は大方予想はついたものの
決定的な決め手に欠ける・・・・。

なぜだ〜!!
シークレット・カードは全て解き明かしたのに!!
・・・っていうか、解き明かしただけじゃ何も解決しないし・・・。

・・・・わからないんですが。
もしかして、迷探偵???

がーん!

2002.10.14

 

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