Heart Rules The Mind

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NOVEL

Loving you   君を愛する事は
Makes nothing easy   
たやすい事ではない

After all   結局

The things we  want  are  not  the  same   
僕らの欲するものは同じじゃないんだ

 

Reach  out   手を差し伸べて
Never  say  no   否 と言わないで

 


Reach Out

Never Say No


 

西の空にほんの僅かだが夕焼けの名残が見えた。
高層マンションの窓からは、玩具のような都会の家並みが見渡す事ができる。
それら全てが今、夜の闇に包まれようとしている。

秋の到来を思わせる涼しい風がその部屋に舞い込んだとき、事件は終わりを告げた。

「・・・すべて、彼の言ったとおりです。僕が・・・殺しました。」

新一の推理によって、トリックが暴かれた犯人に言えるのは、もうそれだけだった。

がっくり肩を落とした犯人の男の手に手錠がかけられる。
警部達に促され、男が部屋からまさに連れ出されようとした時、現場にいた1人の女が新一に突然歩み寄った。

そして。

そのまま女は新一のその頬を、力任せに平手打ちした。
パン、という乾いた音が部屋に響き渡り、全員が新一達に注目する。

「あなたなんて、いなければよかったのに!!」

目に涙を浮かべて、女は憎々しげに叫んだ。

新一の透けるような白い肌に、痛々しいほどくっきりと女の手形がつく。
周囲の人間はその光景に息を呑んだが、殴られた当の本人は至って冷静に、まっすぐと女を見返した。

まるで何も感じていないような新一のその様子が、さらに女の感情を逆なでする。

「あの男は殺されて当然の人間なのよ?!私たちの両親を死に追いやったんだから。
なのに・・・!!どうして!!どうして兄さんが捕まらなければいけないの?!」

ヒステリックに女が叫ぶのを、新一はただ黙って見つめていた。

・・・なるほど、犯人の動機は、親の仇だったというわけだ。
・・・だが、それが?

人が人を殺す理由。
新一にとってそれは、理解はできても納得はできないものだった。

憎しみにしろ愛情にしろ、
どうしたらそこまで、他人に対して強い感情を持つ事ができるのか。

たぶんこれは自分には永遠にわからない謎なんだと、新一はそう思っていた。

 

「私たちと同じ状況になったら、きっと誰でもこうするはずよ!!
だから兄さんは悪い事なんて何もしていない。
これで、やっと兄妹2人で幸せになれるはずだったのに。あなたが余計をするから!」

「君!!やめたまえ!!」

泣き叫んでいた女が数人の警官に取り押さえられ、新一の前から引きずられていった。

 

「大丈夫かね?工藤君・・・。彼女、お兄さんが逮捕されて気が動転したんだろう。気にすることはないよ。」

せっかく事件解決をしたのに、こんな恨み言を聞かされて、さぞ気分を害しただろうと目暮警部が心配そうに新一を覗き込んだ。

けれども新一は、大丈夫ですよ、と薄く笑って見せたので、居合わせていた警部達はほっと胸をなで下ろした。

 

そう。
確かに新一はあびせられた言葉に対して、ショックなど受けてはいなかった。

だが。

あらためて自覚せずにはいられなかった。

やはり、自分には人の心や感情というものがどこか欠落しているのかもしれないと。

 

 

◆     ◆     ◆

 

「好きだ」と、言った。

 

怪盗キッドとしての仕事をしている時に、やたら首をつっこんでくる厄介な名探偵はどうも今までに会った事のないタイプに思えた。

人が苦労して考えたトリックを、面白くもなさげにあっさりと解いておいて「自分はコロシ専門で、泥棒なんて興味が無い」なんて、さらりと言ってのける、その生意気さ加減。

いい度胸してるじゃねーか、と、そう思った。

自分の才知と美貌を持ってすれば、大抵の人間は魅了できると
少なからずも自負していたオレにとって、それはある種ケンカを売られたようなものと同じだった。

そして、そんな相手は初めてだったから、興味が湧いた。
だから、つい自然と視線が新一にいってしまうこともさして気にも留めなかったが。

その好奇心だったはずの感情は、やがて独占欲に変わっていった。

真実だけを見つめるまっすぐな蒼い瞳。

何事にも捕われない心。

 

その瞳と心に映るのが、自分だけならいいのに・・・。

そう思って、だから、「好きだ」と言ったのだ。

 

 

突然の告白に、さて新一はどんな反応を示すだろうと、様子を伺っていると別に憤慨して掴みかかるわけでもなく。

ただその秀麗な眉を少しだけ寄せて、オレを訝しげに見つめた。

「・・・おかしな奴。」

そう付け加えて。

 

とりあえず、オレは拒絶されなかったのをいいことに、そのまま新一のところに転がり込んだ。

それから、始まった二人だけの生活。

 

唇を重ねても、身体を重ねても、新一は何も言わない。
けれども、それは新一に受け入れられたということでは決して無くて。

そう。だって新一からは一度だって求めてきた事なんかない。

そう考えれると、自分の中にどうにもわけのわからないもやもやした感情が、生まれてくるのを感じるが、それがどういうものかは説明がつかなかった。

 

だけど、一つだけわかっていることがある。

オレは新一を好きだけど、
新一はたぶんオレを好きじゃないってこと。

 

 

◆     ◆     ◆

 

 

日が完全に落ちた頃、新一は帰宅した。

「お帰り、新一。早かったね?」

1人留守番していたオレは、そろそろ時間的にも夕飯の準備をしようとしていたところだった。
リビングのソファから、TVを消して立ち上がる。

まずは、お疲れの名探偵に飲み物でも出してやらないとね。

 

「メシは?これから作るけど食べるだろ?」

「・・・ん。でも、あんま食欲ねーから、こってりしたものはパス。」

ふ〜ん。心なしか顔色が良くない気がするけど・・・。
事件でなんかあったのかな。

なんて、重い雰囲気を漂わす新一を横目に見ながら思う。
それでも、そんな事をストレートに聞いたりはしない。

そこはお互い不可侵の領域。
仕事に関しては、干渉しないというのは暮らし始めてからの暗黙のルールだった。

言いたきゃ、自分から言うだろ。

オレは、冷たいお茶の入ったグラスを新一に笑顔で差し出した。

 

その日の夕食は新一のご希望とおり、あっさりした和風パスタにしてやったのにそれでも新一は少ししか食べなかった。

食が細い事も知ってるけどさ・・・。
あ〜あ、もったいねーな。

そもそも食べることにあまり関心が無いという新一が、オレには信じられないね。
食べることだって、生きる上での大きな楽しみの一つなのにさ。

溜息一つ、食器の後片付けをしようと立ち上がろうとしたオレを、
ふいに新一が声をかけた。

 

「・・・なぁ、お前さ、殺したいほど憎んでる奴っているか?」

そのいきなりの問いに、オレは僅かに目を細める。

何を突然言うかと思えば。 犯人にでも何か言われたか?
オレは心の中で、クスリと笑った。

 

『殺したいほど憎い奴はいるか?』

 

その問いの答えは、もちろん 『イエス』 だ。

『怪盗キッド』なんてやっているのが、何よりもその証拠。
オヤジの死の真相を暴くためでもあるけれど、もしオヤジを殺した奴らと実際に顔を合わせることになったら、オレはそいつらを殺してしまうかもしれない。

いや、今だって殺してやりたいと願っているかも。

 

だから、にっこり笑って、いるよ、とだけ答えた。

新一の蒼い目が、オレを真っ直ぐに見て少し揺れる。
それからたいして興味もなさそうに、そうか、と小さく呟いて視線を逸らした。

 

『お前には、殺したいほど憎い奴はいるのか?』 (オレはいないけど。)

 

新一の真意はそうだったに違いない。
だから、敢えて言ってやる。

 

「・・・じゃあさ、新一。もし、オレが誰かに殺されたらどうする?
そいつの事、殺してやろうって憎むと思う?」

オレがそう聞き返すと、新一は再びオレを見据えていたが、やがてはっきりと回答してくれた。

 

「・・・そんなの、その時になってみないとわからない。」

なるほど。新一らしい答えだ。

「・・・そうだね。」

オレは柔らかく微笑みを返しながら、今度こそ皿を持ってテーブルを立った。

 

・・・何を感傷的になっているんだか。

先程の新一の答えに、僅かながらも心に軋みを感じた自分を、不覚に思う。

新一が他人に対してほとんど関心の無い事など、とっくに知ってる。
他人どころか、自分の感情さえも、まるで最初から持ち合わせていないかのように。

殺人事件なんていう血生臭くて、人間の憎悪が渦巻いている中に身を置きながらも
こんなにも新一がまっさらで綺麗でいられるのは、そのせいかもしれない。

事の真相だけを論理的に検証し、パズルのように組み立てていく。
そこに確かに感情は不要なものかもしれない。

そう考えれば、新一にとって探偵とは、まさに天職なのだ。

・・・だが。
それとこれとは、話が別なわけで。

 

・・・せめて、もう少しでもオレに関心を持ってくれてもいいんじゃねーの?

相変わらず、自分達の距離が縮まっていない事を再認識させられる。

一体いつになったら、オレは新一の周りにいる 『その他、大勢』の中から昇格できるのだろう?

 

 

◆     ◆     ◆

 

それから数日後。
新一は男にしては細いその腕に、真っ白な包帯を巻いて帰ってきた。

「・・・どうしたワケ?そのケガは。」

さすがにケガまでされちゃ、理由を聞かずにはいられない。

オレの言葉に、新一は少し笑って、犯人にやられた、とだけ言った。

 

念のため、と思って、オレは新一の傷を確かめさせてもらった。
鋭利な刃物でつけられたと思われるその傷は、心配するほど深くも無く
きちんと手当てもされていたが。

「・・・ったく、他に警官だっていたんだろ?何をボサっとしてんだか。」

新一を守りきれなかった警察に軽く悪態をつきながら、包帯を巻きなおしてやる。

「新一だってそうだ。うまく避けられなかったのか?」

「・・・いや。避けようと思えば、避けられたのかもしれないな。」

新一の言葉に、思わず手を止めて、まじまじとその顔を見返した。

「・・・なんだよ、それ?まさかわざと刺されたのか?!」

そう言ったオレの声は低く押し殺したものだったが、実はかなり怒っていた。
オレの感情を見て取ったのか、新一は困ったように笑う。

「別に好きで刺されたわけじゃない。・・・ただ、オレは知りたかったんだ。
犯人がオレにナイフを向けた時、アイツはオレを殺したいほど憎んでいたのか。
もし刺されたら、その時オレの中に憎しみという感情が生まれるのか。

・・・そんなことをぼんやり考えてたら、逃げるのがおくれた。」

 

・・・なんてあまりにも馬鹿げた事を言うから、一瞬オレは言葉を失ってしまった。
が、すぐにその感情は呆れを通り越し、怒りへと変わる。

「バッカじゃねーの?!それで大人しく刺されてやったわけ?!
そんな方法でしか、人の感情を確かめる事ができねーのかよ!!」

めずらしく声を荒げたオレに、今度は新一の方が驚きの表情を見せる。
それに構わず、オレは続けた。一度火がついた怒りはそう簡単には治まらない。

「 『名探偵』が聞いて呆れるね!そこまで人間の感情に疎いなんてさ。
新一には人としての心がどっかに抜け落ちちゃってるんじゃねーの!!」

!!

感情に任せて、思わず言ってしまった言葉に自分でもはっとした。

言い過ぎたと思った時にはもう遅い。
新一の蒼く澄んだ瞳が、そのままオレを射抜いた。

「・・・お前の言うとおりかもしれないな。実際、刺されてみても何もわからなかった。
今までだって、他人に対して何か強い感情なんて持ったこともない。

きっとオレには心が無いんだ。」

新一はさらに続けた。

「快斗、・・・オレがお前に抱かれたのは、・・・
・・・オレを好きだと言ってくれたお前にやれるものが他に何もなかったからだ。
身体以外何も・・・。

だって、心はお前にはやれない。無いものはやることなどできないだろう?」

「・・・新一・・・。」

 

 

「・・・快斗、だからオレは、お前を愛せない。」

しばらくして、沈黙を破ったのは新一のそんな言葉だった。

 

オレは自分の愚かさを呪った。

新一が自分を愛していないことなど、百も承知だったくせに。
新一が己の感情にも疎い事を知った上で、それを逆に利用していたくせに。

すべてはそんな虚構の上になりたっていたのに。

たった今、それを自分自身でぶち壊してしまったのだ。

 

だから。

オレはそのまま工藤邸を飛び出した。

 

 

リビングに1人残った新一は、ふと頬に熱い何かかが伝うのを感じた。
手で拭って、初めてそれが何か理解する。

「・・・涙・・・?・・・どうして・・・?」

けれども、なぜ自分が泣いているのかは新一にはわからなかった。

 

 

◆     ◆     ◆

 

快斗が新一のもとを去ってから3日が過ぎた頃、警察にキッドの予告状が届いた。

余程、機嫌が悪かったのか、キッドの暗号はおよそ警察関係者どころか、どんな天才学者でも解読不可能かと思われるほど、難解なものだった。

「一体、キッドはどういうつもりなんだ?!今までこんなわけのわからないものを送ってきた事なんてなかったぞ?!」

鼻息荒く唸った捜査2課の中森警部は、無理を承知でその予告状を持って新一のところへやってきた。

 

「申し訳ない、工藤君!!君がキッドなんて管轄外なのはわかってるんだが、どうにも君以外、この暗号を解けそうな人物はおらんのだ!」

そう言って深々と頭を下げられてしまっては、いくら新一とて無下に断る事などできなかった。

 

引き受けてしまってから、新一は少し後悔した。
暗号を解いたら、きっと現場に出向かずにはいられない自分の性分を
わかっていたから。
もしそうなったら、快斗と顔を遭わせなければいけない。

なぜか・・・。

新一は快斗の顔を見るのがツライ気がしてならなかった。

 

実際、キッドの予告状は、本当にこれまでにない程、困難なもので、さすがの新一もひどく頭を悩ませた。
それでも、丸一日かかってなんとか全てを解読し終えると、やっぱり現場へ行って、文句の一つも言ってやろうという気になった。

・・・ずいぶんとひねくれた暗号を作りやがって。

 

予告日当日、キッドの逃走経路として導き出したルートへ新一は向かっていた。

 

 

「・・・遅いな。」

とある雑居ビルの屋上で、時刻を確認した新一はそう呟いた。
夜空にはぽっかりと満月が一つ浮かんでいるだけで、白いグライダーの影は見えない。

犯行予定時刻はとうに過ぎていた。
時間的にはもうここに立ち寄って、お決まりの獲物を月にかざす儀式をしてもいい頃だ。
なのに、白い怪盗はまだ現れない。

まさか自分の推理が間違っていることなんてない。

新一は絶対の自信を持って、ただ待つしかなかった。

 

・・・何か、あったのかな。

 

ふいに新一の頭を何かが過った。

怪盗キッドを追うのは警察だけではなく、凶悪な組織もいる。
その中には、命さえも狙う奴らもいた。

事実、快斗の身体にはいくつかの銃創があった。

 

・・・もしかして、ヤバイ奴らと遭遇でもしたんだろうか?

 

そう考えたとたん、新一は急速に体温が下がるような気がした。
何もしていないのに、鼓動が早くなる。
胸を鷲掴みにされたような息苦しさまで感じた。

突然起こった自分の体調の変化に驚きながらも、新一の頭は目まぐるしく働いていた。

 

アイツが予定時刻に現れないことなんてない。
・・・ということは、やはり何かあったんだ!

もし誰かに狙撃されていたとしたら!!
ケガをして動けないのかもしれない。

 

それとも

もしかしてアイツ

もうこの世にはいないのかもしれない・・・。

 

ふいに足の力が抜ける気がして、新一は思わず目の前のフェンスに縋りつくような格好になった。

 

快斗と過ごした時間が走馬灯のように、新一の頭を過った。

もし、このまま快斗と2度と会う事ができなかったら。
こないだ見たひどく傷ついたような顔が最期だったとしたら。

自分の中にふつふつと湧き上がるそれを、新一は恐怖だと理解した。

 

恐怖?
何に対して?

 

快斗を失うことの何が、自分に恐怖を与えさせるのか、新一にはわからなかった。

 

こんなつまらない自分を好きだと言ってくれた唯一の人間がいなくなるから?

後にも先にも、きっと自分を愛してくれるような物好きは、快斗ぐらいなものだろう。

 

・・・オレは誰かに愛されたかったのか?
自分では誰も愛せないくせに?

 

新一がそこまで考えた時、ふと頭上に白い翼が現れた。

 

突然、舞い降りた白い怪盗に新一は目を奪われたまま、何も言葉を発する事ができなかった。

 

◆     ◆     ◆

 

組織の奴らに絡まれて、手間取っている間にずいぶんと時間をロスしてしまった。
オレは、舌打ちをしながら、銃弾が掠めた頬を伝う鮮血を軽く拭う。

とりあえずは、獲物をチェックしとかねーと。

そう思って目指した雑居ビルの屋上に、見慣れた影が見えた。

・・・やっぱ、来てたか。

大人げないとわかっていながらも、ずいぶんひどい予告状をたたき付けたと思っていた。
それがどうせ警察なんかじゃ解読できずに、おそらくは新一の手に渡ることも。

ただ、新一に会いたいと思ってしたことじゃなかった。
どちらかというと、会うのがツライというのが、情けないが本音なわけで。

だから、新一の姿を見つけたとき、少し心が痛んだが、
その心情を表に出すわけにはいかない。

今のオレは、怪盗キッドなのだ。

 

屋上へ舞い降りたオレを見上げる新一の顔が、どこかいつもと違うように見えた。
が、特には気に留めずに、挨拶の声をかける。

「こんばんわ、名探偵。今宵は少しお待たせしてしまったようですね。」

言いながら、シルクハットの唾を僅か下げ、目深に被り直した。

すると、オレをまっすぐ見つめていたその蒼い瞳から、一滴の涙が零れた。

オレは一瞬、自分の目を疑った。

 

「・・・何故、泣くの?」

「・・・わからない。でも止まらないんだ。」

新一の目から溢れるその涙は、頬を伝い、ぽたぽたとアスファルトに落ちて染みを作った。

突然泣き出した新一をどうしていいかわからず、オレはただその涙を拭ってやる事しかできなかった。

「・・・撃たれたのか・・・?」

オレの頬の傷を見て、新一がそう聞いた。

「ああ。ちょっとばかし、遊んでたら来るのが遅くなった。」

そう言ってやると、新一は小さく、バーローと呟いた。

 

「・・・お前に、もう会えないんじゃないかと思ったら、急に胸が苦しくなった。
何故だかわからないけど、無性に恐かったんだ。

・・・オレにはわからないんだ。
どうしてそんなことを思うのか。オレには心なんて無いはずなのに。

・・・身体はどこもなんともねーのに、苦しくて死にそうだった。
でも、お前の姿を見たらウソみたいにそれが治って、今度は替わりに
涙が止まらないんだ・・・。」

 

オレは新一の腕を取ると、力任せに自分の方へ引き寄せた。
そしてそのまま強く抱きしめる。

 

「・・・バカ。何が心がねぇーんだよ・・!!わかれよ、いいかげん。
・・・それが、好きってことなんだろ?何でそんな簡単なことわかんねーんだ。」

言いながら、新一の頬に口づけてやる。

「・・・オレが、お前のこと・・・?」

「ああ、そうだよ。それ以外、何か思いつくか?」

新一の頬を両手で掴み、しっかりと自分の目を見つめさせる。
そして、お互いの唇を合わせた。

 

「・・・快斗まで、何泣いてんだよ?」

ふと自然に出た涙を新一に指摘される。

「・・・これはね、嬉し泣き。」

そう言ってウインクして見せると、新一が自分から優しいキスをしてくれた。

 

「・・・なぁ、オレ達、今更両想いだなんて、ずいぶんと間抜けな話じゃねぇ?」

「・・・ほんとだな。笑い話だ。」

 

そんな会話をしながら、オレ達はもう一度お互いの存在を確かめ合うように
きつく抱き合い、そして深い口づけを交した。

 

秋の夜空に浮かぶ美しい満月だけが、2人を見ていた。

 

 

 

◆ END ◆

 

みちさまからのリクエストにお応えしてのお話でした。・・・(苦笑)
リクは以下の通り!

壊れている新一を快斗視点でのダーク・ノベル!
具体的なリクと言うと。
そうですね・・・・・・
「両想いになってることが前提」
「快斗は『黒羽快斗』が前面、でもときどき
キッドになってもよし」
ってところでしょうか。
あと、見たいシーンとしては
「快斗を撥ね付けながらも、そのことによって
快斗以上に傷つく新一」とか。
「それに気付かず更に傷つける快斗」とか・・・

と、いうものだったのに、出来上がったのはコレ・・・。し〜ん。
個人的な感想を一言。

「なっげ〜よ!!(長い)」

しかも、ダークかどうかよくわからん。
その上、新一の壊れっぷりも今一つ・・・
あ〜!!(絶叫!!)

申し訳ございません、みちさま。
どうやら修行がまだまだ足りないようです・・・(T-T)

 

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