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NOVEL

Happy Barthday

気が付くと、ついこの間満開だと思った桜はすっかり散っていて
代わりに青々とした新緑の芽が木々を覆っていた。

この春から新生活を始めて気を張っていた人々も、そろそろ
慣れない事の積み重ねで、いいかげん疲れが出始めた頃
やってくる待望の長期休暇、すなわちゴールデン・ウィーク。

世の中的に来たるG/Wに向けての行楽ムード一色の今日この頃で
あった。

オレに言わせてもらえば、この時期こぞって出かける奴らの
気が知れないね。
例えば北海道や沖縄なんかに旅行に行こうものなら、
国内のクセに、まるで海外並みの値段が張るし、
なんたって、どこへ行こうにも交通手段も激混みだし、
はっきり言って、疲れるだけだ。

せっかくの休みになぜ疲れるような事をしなければならないのか
理解に苦しむよ。
まったく、休みともなりゃどこかに出かけなきゃならない強迫観念でも
あるのかね,一体?

 

「ねぇ、聞いてるの?新一!」

「え?!あ、ああ・・・」

いけね、オレは今、蘭と下校途中だったんだ。

「ああ、じゃないわよ!まったく!!だから、明日からのG/Wの
話をしてるのに。どうせ、予定無いんでしょ?
だったら、私と一緒に那須高原の園子の別荘に行かない?」

・・・ったく、どいつもこいつも。
人には人の休みの過ごし方っつーもんがあるんだ。
放っておいてくれよ。

・・・とはさすがに言えねーよな、やっぱ。

「・・・いや、悪いけど遠慮しとくよ。お前らも女だけの方が
いろいろと都合がいいんじゃねーの?」

「そんな事無いよ!新一が男一人で気乗りがしないなら、服部君でも
誘って・・・ああ、そうしたら和葉ちゃんも声かけなきゃ!
賑やかで楽しそうじゃない?」

・・・おいおい、服部まで巻き込む気かよ?
オレの前で楽しそうに目を輝かせる蘭には悪いけど、
そんな気はさらさらないんだって。

「服部は無理だと思うよ。あいつ、確か田舎から出てくる親戚の子を
新しく大阪にできたユニバーサル・スタジオに連れて行くとか
言ってたし。」

「あ、そうなんだ。私もあそこいってみたいんだ。
ねぇ、新一、今度大阪行く機会があったら私達も行こうよ!」

「オープン仕立てだし、まだ当分混んでんじゃねーの?」

なんて言って、オレが露骨に嫌な顔をして見せると、
蘭はオレのことをノリが悪いだの、出不精の推理オタクだの
罵倒した。

だっておれ、ユニバーサル・スタジオならロスで本場の行った事
あるしさ。別に一回行きゃ、いいよ。

「ねぇ、じゃあG/Wどうするのよ?」

なんだよ、またソレか。

「別にどうもしねーよ。」

「えぇ?だってG/W中に新一の誕生日があるじゃない!
せっかくだから園子と一緒にお祝いしてあげようと思ってるのに。」

オレは園子の別荘で開かれるであろう誕生日パーティを想像して
一気に疲れが増した気がした。

「別に高校生にもなってわざわざ祝うようなもんでもないだろ?
ガキじゃないんだからさ。」

「え〜!誕生日一人で過ごすなんてさびしいじゃない?!」

だから、そんなことないんだって。
わかれよ、いいかげん。

「いいから、オレのことは気にせず、楽しんでこいって。
誕生日プレゼントに、なんかうまいもんでもお土産買ってきてくれれば
いいからさ!」

ちょうどいいタイミングで蘭の家が見えてきたので、
オレはそれだけ告げて笑顔で手を振り、その場を逃げるように
去った。
背中で蘭の声がしたような気がするけど、まぁ、良しとしよう。

 

 

程なくして帰宅すると、郵便受けの中にオレが不在の間に荷物が
届き、となりの阿笠邸に預けた旨のメモが入っていた。

「おお、新一。ご両親から荷物が届いているぞ!」

「ああ、悪いね。博士。」

オレは博士の家にお邪魔して、灰原の出してくれたお茶を飲みつつ
荷物を開けてみた。
まぁ、この時期届く荷物なんて、どうせ何だか見当はつくけど。
とうさんたちが海外行ってから、毎年恒例のことだし。
そう。プレゼントだろう?オレの誕生日の。

「しかしすごい量じゃのぉ。それ、全部勇作君の作品か?」

「ああ。まだ発売前のもんらしいぜ?あと、お勧めの作家の本も
あるけど。」

箱にぎっしり入ってる書物は、父さんからのプレゼントって訳だ。
これでしばらく退屈しなくてすみそうだな。
けど、オレによこすのにどうして日本語のものだけじゃなくて、
英語のもあるんだ?
別に読めるからいいけど、ある意味いやがらせか?もしかして。

母さんからは決まって洋服。
日本にまだ上陸してないなんとかとかいうブランドのらしいけど、
これまたすごい量だな・・・。
当分、服は買わずに済みそうだ。

「ずいぶんとお優しいご両親ね?」

灰原は相変わらずのクールな表情だったけど、おそらく
オレの親の過保護ぶりに多大に飽きれているに違いない。

 

「ところで、新一。G/Wはどうするつもりなんじゃ?」

「特に予定はないよ。久々、家でゆっくりしようかと思って。博士は?」

「わし達は明日から、白樺湖の貸別荘へ行くつもりじゃよ。
かねてから交際のあった科学研究者のサークルのオフ会が
あるんでの。」

「へぇー。意外だな。灰原も行くの?」

「ええ。たまには空気の美味しいところへ行くのもいいかと思って。」

いい傾向じゃねーか。そうそう、灰原はもう少し外へ出た方がいいぜ。

「なぁ、新一。もし何だったら一緒に行かんか?」

「遠慮しとくよ。オレもたまには一人でのんびりしたいからさ!」

オレは父さんたちからの荷物を片付けながら、苦笑した。
G/Wに何の予定も無い奴はそんなにかわいそうに見えるのかね?

 

オレはそのまま博士のとこで夕飯をごちそうになってから
ようやく帰宅した。

シャワーも浴びて、さぁこれから読書タイムだ。

明日が休みだっていう夜は一番いい。
何の気兼ねも無しに好きなだけ読書ができるから。

オレはお気に入りのマグカップにコーヒーを用意し
完璧な読書スタイルを作る。

さぁ、父さんから送られてきた本をこの休み中に読破しなきゃな!

 

日付はまもなく、5月2日から3日へと変わる頃
オレは一人、自室で趣味の世界へ旅立っていったのだった。

 

 

 

とりあえず、連休をこれから迎える新一君の話。
あれ?快斗が出てきていないわ!!
つ、次でちゃんと出てきますから!!
もう少々お待ちください。

2001.04.25

 

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