appy Barthday 4
G/Wの初日、5月3日。 だって、こんな立派な部屋を取っておきながら、金が無いなんて けれど、快斗は平気な様子で、ごくあっさりと『いい手がある』なんて オレは青ざめながら、マジマジと快斗を見つめてしまった。 「・・・どーするつもりなんだ?」
すると、ふいに部屋のドアをノックする音がした。 ああ、もしかして布団を敷きに女中さんがきたのかも。 「工藤様、御寛ぎのところ大変申し訳ございませんが、 「・・・は?」 どうやら、布団を敷きに来たのではないらしい女中のその言葉に 「今すぐ支度しますんで、少し待ってもらえます?」 女中は快斗の言葉に頷いて、ドアを閉めた。 「おい、快斗!何がどーなってるんだよ?」 オレが快斗を振り返ると、奴は浴衣を脱いで着替え始めていた。 「ほら、新一も早く着替えて!くわしい話は直接本人から はぁ?! オレは納得がいかなかったが、外に女中さんを待たせてる手前、 着替え終えて、オレ達が案内されたのは、女将の部屋だった。 部屋には女将の他に、旅館の板長と思われる男と、もうひとり恰幅の オレ達が部屋を訪れると、女将は恭しく頭を下げた。 用意された座布団にとりあえず快斗ともに座ると、 何なんだ?この重い空気は・・・。 「お呼び立てして大変申し訳ありません。 女将は目を伏せたまま、口を開いた。 「私の名は月野 京子と言います。こちらは板長の竹田と 「・・・はぁ。」 オレは小さく会釈をしたが、イマイチ状況が飲み込めない。 なのに、快斗ときたらオレの隣でちゃっかり出されたばかりの 「実はご相談と言うのは、この旅館のことなんですが。」 女将の言葉にオレは顔を快斗からぐるん、と前へ戻す。 「この旅館は私の曽祖父が始めたもので、代々受け継がれて 父は残念そうでしたけど、決して無理強いはしませんでしたし、 へぇ・・・。じゃあ、この人、女将としては新米なんだな。 「旅館のことに関しては素人な私が女将をやっていけるのも そうなんだ。それはよかった。 オレは女将の話に頷きながら続きを促した。 「しばらくは順調にやってこれました。 「おかしな事?」 「はい。この旅館には工藤様がお泊りのお部屋以外にも、 え? 「最初は見間違えかと思ったのですが、目撃者が続々と現れて。 女将はそう言いながら苦笑した。 幽霊旅館だと? すでに茶菓子をきれいに食べきって、お茶をすすっていた快斗は 「それで、女将さんもその幽霊を見たんですか?」 女将は快斗の言葉に頷く。すると快斗はなおも続けた。 「あなたのお父さんに間違いなかったんですか?」 「いえ、そこまでは。ただ影を見ただけなんです。 「きっと、京子さんにこの旅館を継いで欲しくないんじゃないか?」 急に男が口をはさんで来た。 「どうしてそう思うんです?」 オレがそう言うと、鈴田さんは渋々と告げた。 「実は、この旅館はもう、とうに経営に陰りが見え始めていてね、 幽霊となって? オレが眉を寄せていると、畳み掛けるように板長の竹田さんも 「やっぱり、ご主人は怒っていらっしゃるのかもしれない・・!! そういいながら竹田は体を震わせ、頭を抱えた。 「落ち着いて。何か怒らせるようなことが?」 「だから、旅館のことを良く知りもしない彼女が継ぐことをだ!!」 竹田をかばうように鈴田が声を荒立てて言う。 「それで、ここにいるみなさんは全員、その幽霊を目撃されたわけ オレの言葉に全員無言で頷いた。 「では、きちんとその幽霊の顔まで見た方は?」 今度の問いに関しては、誰一人頷かず、固まっていた。 「なぜ、顔も見てないのに、先代の幽霊だと思うんですか?」 「そりゃ、影しか見てないけれども、先代のお部屋に出たり、 鈴田は忌々しそうにオレを睨んだ。 「先代のお部屋はどこですか?」 オレの言葉に竹田はびくりと体を竦めたが、 彼女の部屋から出て、先代の部屋へ向かう途中、オレは 「お前、事情を知ってて連れてきたんだろう?」 「いいじゃん、これも人助け! んなもん見たかねーよ! そうツッコミを入れようと思った瞬間、悲鳴があがった!! な、なんだ!? オレ達を先導していた女中が震えながら、先に見える離れを 「で、出た!!また幽霊が!!」 板長の竹田が腰を抜かしてその場にへたり込んだが、 ドアを開けようとすると、ロックされていて開かない。 「そこは鍵がかけてあるんです・・!」 オレの後を追って走ってきた女将が息を切らしながら、オレに 「やっぱり、父の幽霊なんでしょうか・・・?」 女将が少し悲しそうに目を潤ませながら呟いた。 「京子さん、悪い事は言わない。これはきっと先代の意思だ。 彼女の肩を抱きながら、鈴田がなぐさめるようにそう言っていたが
それから、しばらくオレは幽霊が現れた先代の部屋を丹念に 「何か見つかった?」 考え込んでいたところ、ふいに声をかけられて、振り向くと 何をうれしそうな顔してんだ、コイツ? 「何か、仕掛けがあると思ってるんだろう?」 「・・・ああ。まぁね。それよりお前、何、ニヤニヤしてんだよ?」 「そういう新一も目がイキイキしてるけど?」 え?マジ?
「・・・あのぉ、そろそろ戻りませんか? 2Fに来ていたオレと快斗に下から、竹田が声をかけてきた。 「あ、オレ達もう少しここにいますから、どうぞお構いなく!」 快斗がそう言うと竹田と鈴田は逃げるように部屋から出て行った。 女将は少し困ったように二人を見送った後、階段を上って 「何を調べていらっしゃるんです?」 「いえ、本当に幽霊がいるかどうかわかりませんが、 オレのその言葉に彼女は力なく笑った。 「私もできれば何かの間違いであって欲しいと思います。」 「ところで、あの経理の鈴田さんと板長の竹田さんは、 「竹田は親子2代の板長ですから・・・。でも鈴田は確か一年前 なるほどね。 オレはそう思いながら、ふと人影が映ったのと反対側の窓を見た。 「あ!」 オレは思わず叫んでしまった。 「何?見つかった?」 オレがにんまり笑ってうなずくと、快斗も、ああ、ほんとだ、と 「で、どうしようか?」 「トリックはわかったけど、証拠がない。」 オレががっくりと肩を落とすと、快斗がウインクした。 「じゃあ、犯人を別の方向から追い込んで白状させちゃおうか♪」 「仕方ねーな。」 オレ達のそのやり取りを、女将はよくわからないといった様子で 「心配いりませんよ、女将さん。やっぱりこの騒動はあなたの
やばい!! 2001.05.04
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