Heart Rules The Mind

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NOVEL

Moon is weeping from far away.

weeping in darkness

Moon is calling from far away

I'll be here even if I get beaten by the morning sun

Moon is calling from far away

Hold me tattering

 

 

Moon for you^〜  ―  あなたへの月  act.1 ―

 

 

 
 

 「こちら、キラ・ヤマト。アークエンジェル、応答願います!アークエンジェルっっ・・・!!」

 

  応答はなかった。

  ストライクガンダムのコックピットの中で響くキラの声は、誰にも届かない。

  真っ暗な闇のような深海の中、ストライクはただ海流に身を任せるように漂っていた。

 

  モニターの外に映る海の景色を、キラの紫闇の瞳がぼんやりと追う。

  「・・・まるで宇宙(そら)みたいだ。」

  広い宇宙にたった一人取り残されたような、そんな錯覚がキラを襲った。

 

 

 不意に、海中からザフト軍に攻撃を受けたアークエンジェルは戦いを余儀なくされ、キラはストライクで出撃した。

  何しろ、慣れない海中戦である。

 海専用MS相手に、かなりの苦戦を強いられたキラは、それでも持ち前の腕で対等に戦って見せた。

 だが、海中での戦いは、通常よりもはるかにストライクのパワーを消耗させ、敵を殲滅する前にパワーダウンに陥ってしまう。

 一瞬、ヒヤリとしたものの、必死の思いでキラは敵に立ち向かい、何とか敵MSを全て
 撃破するに至ったのだが。

 最後の一機を倒す時、その爆発に巻き込まれたせいで、少々計器がイカレてしまった。

 おかげで、自分の現在位置もわからずじまいで、キラは途方に暮れていたのだ。

 

 「・・・くそっ! こう電波状態が悪くちゃ、無線も届かない・・・。」

 キラは小さく舌打ちする。

  夢中で戦っている内に、アークエンジェルからはかなり遠くに離れてしまったようである。

  アークエンジェルがキラを見つけてくれないことが、その何よりの証拠だった。

 ヘルメットを取り去り、キラは溜息を1つ零すと、何の反応も示さない計器に目をやった。

 この状態では、誰かが探しに来てくれない限り、アークエンジェルに帰ることができない。

 

 「・・・海上に出て、救難信号を出すしかないか。」

もっとも、この電波状態の悪さでは、信号を出したところでキャッチしてもらえるとは思いがたいが。

 けれども、そろそろストライクのパワーも限界である。

  完全に動けなくなってしまう前に、打てるだけ手は打って置かなければ。

  キラはそう思うと、ストライクを海面に向かって上昇させた。

 

  海面に浮上したストライクを、まだ高い陽の光が眩しく照らした。

  と、前方のモニターに小さな孤島を捉える。

  しばらくそれを無言で見つめていたキラは、ひとまずはそこに身を潜めようと、島へと接近した。

 

 

  だが、キラはこの時、まだ知らなかったのだ。

  地球に降下したばかりのアスランとイージスガンダムを乗せた輸送機が、フラガによって落され、キラよりも一足先に、この島に身を寄せていたことを。

 

 

+++       +++       +++

 

 

  島に上陸したキラは、海岸に面した岩場の影にストライクを隠すと、コックピットを開く。

  とたんに明るい日差しが差し込んで、キラはその目を眩しさに細めた。

 

  シートベルトを外し、シートから立ち上がったところで、思い直したようにコックピットの脇に置いてあった銃へ目をやった。

  護身用にと、フラガから持たされていたものである。

  自分はもう地球軍のパイロットなのだから自覚しろと、地球に下りてからそう言われた。

 

キラはその細い眉を僅かに寄せると、銃を手にとって腰に収め、コックピットから飛び降りた。

潮風が、キラの頬を優しく撫でる。

キラは、地平線まで広がる穏やかな海を背にし、草木が生い茂る島の奥へと足を進ませて行った。

 

 

  

  同じ頃、キラがいるところとは反対側の岸辺にアスランはいた。

  彼がまだイージスに乗っていたのなら、ストライクがこの島に接近した時点で気づく事もできたろう。

  だが、アスランは既にイージスから降りて、浜を探索中だった。

  どうやら、この島が小さな無人島であるということはわかったものの、無線が回復しない限りは
  アスランも動きようがなかった。

 

  輸送機を落した地球軍の機体のことも気になる。

  なぜ、あんなところを単機で飛んでいたのか。

  もしかすると、この近海に地球軍の艦隊がいるのかもしれない。

 

  そう考えたアスランの背後で、不意に人の気配がした。

  即座に死角となる岩場に転がるように身を隠すと、銃を構える。

  今はまだ見えない敵が姿を現すのを、アスランは息を殺してじっと待った。

 

  「・・・地球軍の兵士? まさかオレ達の輸送機を落したパイロットか?」

  アスランは、銃のグリップを強く握り締めた。

 

 

  アスランの銃口が自分の方を向いているのも知らずに、キラは草を掻き分けながら歩みを進める。

  意外にあっさり眼前に広がった対岸に、キラはこの島の小ささを思い知った。

  「・・・ずいぶん小さい島なんだな。無人島か・・・。」

 

  そうキラが呟いた、その瞬間。

  響き渡る銃声とともに、キラの立つすぐ傍の樹に銃弾が撃ち込まれた。

  「・・・・つっ・・・!!」

  間一髪それをかわしたキラは、樹の影に身を隠しながら、装備していた銃に手をやる。

 

  ・・・・・・ザフト兵?! 何でこんなところに?

 

  ゴクリと唾を飲み下しながら、キラは相手の動きを窺った。

  すぐさま第二波が撃ち込まれることはなかったが、相手の気配がだんだんと近づいてくるのが
  わかった。

  このままでは、マズイ。

  キラはぐっと歯を食いしばると、一発、相手の方へ威嚇射撃をした。

  その隙をついて、一気に樹の陰から飛び出す。

 

  当然、撃ち込まれる弾丸を転がり避けながら、キラも相手へ向けてさらに一発お見舞いした。

  そのキラの撃った銃弾が、相手の手から銃を吹き飛ばした。

 

 

  「ちっ・・・・!!」

  砂浜に落ちた銃にアスランは舌打ちをすると、いったん後方に下がり、その姿勢を低くした。

  と、同時に足に仕込んであるナイフを取り出し、両手で構える。

  今はもう、目の前にいる「敵」である人物をしっかりととらえて。

 

  だが、アスランの瞳が映したのは、驚いたように目を見開いて銃を構えるキラの姿だった。

 

 

+++       +++       +++

 

 

  「・・・アス・・・ラン?」

  「・・・キラっっ?!」

 

  まさか、こんなところで再会するなど、誰が予想しただろう。

  お互いの顔を確認したところで、それまで二人の間に張り詰めていた緊迫した空気が
  ほんの少しだけ和らいだ。

  双方、武器を構える手がゆっくりと下がっていく。

 

  「・・・キ、キラっ、 お前、何でこんなところに・・・・。ここで何をしている?!」

  「アスラン・・っ、き、君こそ、どうして・・・・。なぜ、こんなところにいるんだ?」

  「・・・そうか。オレ達の輸送機を落したのは、お前の仲間なんだな?」

  「ゆ、輸送機?」

 

  アスランの話がキラには見えない。

  ずっと海中で戦っていたキラには、空中でフラガがアスランの乗った輸送機を襲ったことなど
  知る由もなかった。

  目を丸くするキラを前に、アスランの瞳には剣呑とした光が帯びる。

  鋭いナイフの刃が再び、キラへと向けられた。

 

  「キラ・・・、前に会った時、オレが言った事を覚えているか?」

  「・・・アスラン・・・。」

  「・・・・“次に会う時は、オレがお前を撃つ”と、そう言った事を・・・・。」

  「・・・・つ・・・っ!」

 

  アスランの言葉に、キラは唇を噛み締めた。

  そして、キラも再び銃口をアスランに定める。

 

  「・・・ぼ、僕だって・・・っ!!」

  銃を握り締めるキラのその手が、僅かに震えていた。

  その震える指先が引き金にかかるより先に動いたのは、アスランだった。

 

  目を見張るキラを尻目に、アスランの体は空中へ浮いた。

  そして、フワリとキラの頭上へ舞い降りたかと思うと、銀のナイフを振りかざす。

  慌てて身を引きながら、キラはそのアスランの一撃をかわした。

  と、同時に銃を構えたが、その銃を持つ手首をアスランに捕らえられてしまう。

  そのままあらぬ方向へ捻り上げられ、苦痛にキラの顔が歪む。

 

  間髪入れずに、アスランはキラの腕を掴みあげ、その体を砂浜に投げ飛ばした。

  地面に叩きつけられた衝撃で、キラの手から銃が零れ落ちる。

  キラが起き上がる間も与えずに、アスランはそのキラの体に覆いかぶさるようにのしかかった。

  抵抗できないように、要所要所を抑え込んで。

  その間、ほんの数秒の出来事である。

 

 

  的確に計算されたような、そのアスランの動きは見事だった。

  ザフト軍に入隊し、兵士としての訓練を受けていたからこそ、である。

 

  対して、キラはどうだったか。

  たとえ、MSの戦いでは問題なく応戦できたとしても、こんな生身の格闘など初めての経験である。

  相手がナチュラルであるならまだしも、今は相手はキラと同じコーディネイターのアスランだ。

  この状況で、既にキラに勝ち目はなかった。

 

 

  どうにも身動きとれない状態にキラを押さえつけたアスランは、鋭い刃のナイフを大きく振りかざす。

  キラの、その喉もとに突き立てるために。

 

  殺気を灯した瞳のアスランの下で、キラは息を呑んだ。

  あとはもう降リ下ろされるばかりの銀色に煌くナイフを、しっかりとその目に捉えて。

  

  キラの深い紫闇の瞳が、大きく見開かれる。

  その目は、僅かに哀しみに濡れていた。

 

  そんなキラの瞳の中に己の姿を見たアスランは、ナイフを振りかざした格好のまま、
  その動きを止めた。

 

  「・・・・アスラン?」

 

  突き立てられるはずのナイフが自分に向かってこないことに、キラは小首を傾げた。

  どこかまだ幼さを残すそのキラの表情に、アスランの中にあった殺意は急速に遠ざかっていく。

 

  月で一緒に過ごした頃と、何ら変わりのないような真っ直ぐに自分を見つめるキラの瞳。

 

  そんなキラを ―――― 。

  アスランが殺せるわけはなかった。

 

 

+++       +++       +++

 

 

  キラから取り上げた銃のマガジンから弾を抜き出すと、アスランは銃と弾をそれぞれ別々に
  海中へ放り投げた。

  こうしておけば、キラが万一海の中から銃を拾い上げたとしても、使用できる可能性は低い。

  念入りなアスランの行動だった。

 

  砂浜では、両手と両足を縛られたキラが横たわっている。

  キラは、アスランが自分の銃を海に捨てるのを無言で見つめていた。

 

  ポチャンと音を立て、銃が海中へ沈んでいく。

  その様子を見届けたアスランは、砂浜に転がっているキラの脇を通り越して、地面に落ちたままに
  なっていた自分の銃を拾い上げた。

  砂を掃いながら腰元にその銃を収めると、アスランはあらためてキラを振り返る。

 

  「ストライクは向こうの浜に隠してあるのか?なぜ、こんなところにいる?お前の艦はどうした?」

  問いかけるアスランを、じっと下からキラは見つめ返しながら答えた。

  「アークエンジェルがどこにいるかなんて、僕だって知らない。・・・僕だって、来たくてここに
  来たわけじゃないんだ。君こそ、どうしてこんなところに?」

  そのキラの答えに、アスランはやや眉を寄せて見せる。

  「オレ達の輸送機を襲ったあの地球軍の戦闘機は、お前の仲間じゃないのか?」

  「輸送機?・・・わからない。僕はずっと海中で戦っていたから・・・。」

  「海中?」

  「アークエンジェルがザフトの潜水戦艦から攻撃されて、僕は海中でMSと戦っていたんだ。
  だけど、戦闘で計器がヤラレて方位が全くわからなくなっちゃって・・・。 もうストライクのパワーも
  限界値で、これ以上は動けなくて・・・。」

  「・・・そうか。 オレは地球に降下したばかりで、イージスとともに基地に移動中だった。
  大した装備もしていない輸送機でね。
  そこを運悪く地球軍の戦闘機に見つかって、落とされたんだよ。幸いにして機体は無事だが。」

 

  やや皮肉めいた笑いを浮かべるアスランに向けて、キラは自由にならない体を必死に起こした。

 

  「・・・僕をどうするつもりだ、アスランっ!」

  そう叫ぶキラを、アスランは冷たく一瞥する。

  「決まっている。 救援が来たら、お前も一緒にカーペンタリア基地へ連れて行く。」

  冷ややかにそう告げるアスランに、キラの瞳は大きく見開かれた。

 

  「僕はっっ・・・・!僕は、ザフトになんか行かないっっ!!」

  「キラっっ!!」

  「アスランっ、僕はザフトになんかっっ・・・!!」

  「いい加減にしろっっ! キラっっ!!!」

  「・・・・っ!!」

 

  耳を刺すようなアスランの声に、キラは思わずびくりと肩を竦ませる。

  見上げたアスランの瞳には、激しい怒りが見て取れた。

 

  そして、その怒りを押し殺したような低い声を搾り出す。

 

  「・・・・今、ここで、オレにお前を殺させるつもりか。」

  「・・・・アスラン・・・・。」

 

  強くその拳を握り締めて、ギリギリとアスランはキラを睨みつけた。

  そのアスランの怒りが、自分を殺したくないと思ってくれている親友の優しさだということは、
  キラも痛いほどわかる。

  だが、だからといって、このままアスランとともに大人しくザフトに行く事など、キラにできるはずも
  なかった。

 

  「・・・僕だって・・・。僕だって、君と戦いたくなんかない。だけど、ザフトには行けないっっ・・・!
  僕は・・・・っっ!!」

  「お前が何と言おうと、一緒に連れて行く。その方がお前のためだ。」

  「っ・・・! アスランっっっ!!!」

 

  この件に関して、二人の意志はどこまでも平行線であった。

  アスランはやるせなさそうに重い溜息をつくと、キラに背を向けてイージスへ歩き出す。

 

  「アスランっ! 僕はザフトなんかに行かないっ!!行くもんかっっ!!!」

 

  そう必死で叫ぶキラを、アスランが振り返ることはなかった。

 

 

++  To Be Continued >>> NEXT

 

 

月が遠くで泣いている

暗闇の中 泣いている

 

月が遠くで呼んでいる

朝陽に負けても ここに居ると

 

月が遠くで呼んでいる

私を抱いてと ちぎれながら

 

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