ターゲットである白い鳥は、追い詰められたことを知った。
前方はドラム缶を積み上げたコンクリートの塀、後方には自由な逃亡の地が広がっていたがそこにはターゲットである彼を追ってくるものの存在があった。
・・・あー、クソ! ツイてねぇーな!!
そう思いながら、漆黒の空を仰ぐ。
天からは痛いほどの雨が降り注いでいた。
白いマントが雨をはじいているものの、既に全身びしょ濡れである。
うんざりしたように俯くと、シルクハットのツバから滝のように雨雫が滴たった。
そのまま目を閉じて耳をすませる。
雨の飛沫をあげて、こちらにやってくる敵の気配を察知しようと。
瞬間、空気を切り裂くような音が鳴り響き、何かがドラム缶に命中したかと思うと、
青い閃光の花が闇に咲く。
衝撃とともに、爆風が彼の体を数メートル吹き飛ばした。
あたりは白い煙に包まれる。
「・・・・やれやれ。ヤッてくれるなぁ・・・・。」
とっさに取った受身の体勢から、彼は素早く立ち上がると溜息をもらす。
と、同時に胸元からトランプ銃を引き抜いた。
モノクルに隠れていない方の彼の瞳が僅かに細められると、闇の中からいくつもの黒い影がちょうど浮き出てきたところだった。
雨が勢いを増す。
あっという間に影たちが白いターゲットを取り囲んだ。
銃を構えた男達が、徐々に間合いを詰めてくるが
それでも本人はいたって冷静に、いや呆れるほど茫洋とした表情でそれを見つめていた。
「もう逃げ場はないぞ!怪盗キッド!! 大人しくその宝石をこちらに渡せ!」
「いやだと言ったら?」
真っ直ぐに銃口を向ける男に向かって、キッドはのほほんと言った。
それを聞いて、男の顔は狂気じみた笑いに歪んだ。
「この期に及んで、まだそんなフザけた口を利けるとは大したものだ。」
「そりゃ、どうも。」
キッドはにっこりし、シルクハットのツバをやや下げて見せる。
男はもう一歩踏み出し、キッドへと近づいた。
「ヘタな強がりはよせ。 もう勝負はついている。」
そう言って、男の指が引き金にかかったのを見届けると、キッドは
「そうかな?」
と、ニヤリと笑った。
水飛沫が跳ねる。
男達の目の前で、白いマントが大きく翻ったかと思う瞬間。
まるで闇をも奪うかのような眩い閃光があたりに拡がった。
視力を奪うほどの強烈な光に、男達の悲鳴が木霊する。
再び視界が回復した時には、男達はもう既に身動き一つできないような状態になっていた。
悔しそうに唇を噛み締める男達を背に、先へ行こうと三歩ほど進んで、キッドは振り返った。
「邪魔してくれた分、きっちりお返しをさせてもらいたいトコだけど、生憎オレもヒマじゃない。ありがたく思ってもらいたいね。」
精一杯、恩着せがましく言うと、キッドは地を蹴った。
背中で自分を罵倒する男達の声を聞きながら、白い怪盗はクスリと笑う。
「悪いけど、オレが相手にしてんのはもっと手ごわい奴らだからさ。」
降りしきる雨の中、白い鳥は闇に溶けるようにそのまま消えていった。
+++ +++ +++
新一がタクシーから降りた時、すでに雨は止んでおり、空には雲の切れ間から月が顔を出していた。
アスファルトにできた水溜りをよけながら、新一は足を進ませる。
目の前の廃墟のビルを目指して。
新一は頭上を振り仰ぐと、
「犯行予告から一時間半。・・・・何もなければもうとっくにこっちに着いてるってとこか。」
そう呟いた。
そのままビルのドアをくぐる。
寒々しいビルの内側を月明かりだけが照らして、かえって貧弱に見せていた。
新一は右手の階段を見上げた。
人の気配はどこにも感じられない。
だが、キッドを狙う奴らが潜んでいる可能性も全く無いというわけではなかった。
新一は念のため胸ポケットから銃を取り出すと、手馴れた動作でセーフティを外しておいた。
そして。
ビルの屋上までたどり着いた新一を出迎えたのは、青い月夜だけだった。
殺風景な屋上の周囲を無言で見渡す。
誰の姿も無く、特に争ったような形跡もそこには無かった。
「まだ来てないのか。 ・・・ったく、どこで時間食ってんだか・・・・。」
冷ややかな言葉とは裏腹に、その瞳には僅かながらの心配の色が灯る。
青い光の中で、新一はひっそりと立ち尽くしていた。
新一の待つ廃墟のビルにキッドが現れるのは、それから約20分後のこと。
追っ手を振り切って、びしょ濡れの姿で現われた怪盗を、探偵は大層不機嫌な顔で迎えた。
「・・・・・・・遅ぇーんだよ。」
「いやぁ、悪い悪い。」
とは言うものの、ちっとも悪びれた様子もなく、キッドは頭をかいた。
そのままシルクハットを取り、軽く振って水飛沫を飛ばす。
「・・・にしても、ヒドイ雨だったね。新一は濡れなかった?」
水気を帯びた黒髪をかき上げながらにっこり笑うキッドに対して、新一は素っ気無く言い返す。
「平気だよ。ここまでタクってきたし。オレが着く頃には雨も上がってた。」
「そっかー。いいね。オレもタクればよかったなぁ〜。」
それは出来ない相談である。
怪盗キッドが堂々とタクシーで逃亡するなど。 ま、得意の変装をするなら話は別だが。
「・・・オメーな、フザけてんなよ? 大体、どこで寄り道してやがった?
ずいぶん、遅かったじゃねーか。」
腕組みしてそう言う新一をキッドはチラリと見やり、ペロリと舌を出した。
「逃げる方向を間違えたんだよ。」
「ウソ言うな、バカ。」
新一は呆れた。
本当は聞くまでも無い。 キッドが遅れた理由など一つしかないからだ。
どうせ、キッドの盗んだ宝石、もしくはキッド本人の命までも狙う、良からぬ奴らに
襲われたに決まっているのだ。
「・・・・ケガはないのか?」
少し心配そうに新一がそう聞くと、キッドはうれしそうに笑って、大丈夫♪とウインクした。
「雨も降っててグライダーも使えなかったしさ。 余計な奴らを撒くのに少し手間取っただけ。」
「・・・・・なら、いいケド。
とりあえず、現場には不審者は無し。 このビルにも誰か潜んでる形跡はなかった。」
言いながら、新一はポケットから銃を取り出して、再びセーフティをかけた。
その様子を目に映しつつ、キッドはネクタイをやや緩めて、シャツの上のボタンを一つ外し
一呼吸入れる。
「それは残念。あんなに張り切ってショーをやったのに、今日はもう奴らのお出ましは無しか。」
「ま、仕方ねーな。そうそう頻繁に現れる奴らでもねーし。
・・・・で、お前、今夜の獲物はどうだったんだよ?もう確かめたのか?」
新一に言われて思い出したように、キッドは胸元に手を突っ込んだ。
白いハンカチに包まれていたソレは、美しいブルー・サファイア。
キッドはそれを手にとると、空に浮かぶ銀色の月に翳した。
月に向かって立つキッドの白いマントが緩やかに風に舞って、幻想的なシーンを創り出す。
いつ見ても何か神聖な儀式なようなソレを、新一は何も言わずにただ見守った。
そうするのが、礼儀とでもいう風に。
やがてキッドが振り返ると、新一は口を開いた。
「・・・どうだ?」
「・・・ハズレ。」
言い終わらぬうちに、サファイアが新一目掛けて飛んでくる。
軽く右手を上げると、それは迷わず新一の掌に吸い込まれた。
手の中に収まった宝石を、新一も月に翳して見ながら言った。
「こっちもなかなか見つからねーな・・・。
ま、星の数ほどあるビッグ・ジュエルの中から探すなんて、そう容易い事じゃないとは思うけどさ。」
新一の言葉にキッドも苦笑する。
「・・・まぁね。気長にやるしかないってないってことかな。」
どこかそう哀しげに呟いたキッドを新一は見やると、気を取り直すようにサファイアを軽く
宙へ投げた。
垂直に上がった蒼い石は、キラキラと月の光を反射させながら、再び新一の手に落ちていく。
ぎゅっとそれを握り締めると、新一はニヤリと笑った。
「とりあえず、コレはオレから返しといてやるから、お前はさっさと帰って、風呂でも入れ。
いつまでもそんな格好してると風邪引くぞ?」
すると、キッドもにっこり少年らしい笑顔を浮かべる。
「OK! じゃ、新一も一緒に帰る?」
「・・・バーロー! オレはこれからコレを返却しなきゃなんねーだろーが。
中森警部への説明もあるし、まだ帰れねーよ!」
キッドが盗んだ宝石の返却はともかく。
自分を信頼しきっている警察関係者への毎度のごまかしは、実は結構ツライ。
新一のそんな心情を知ってか知らずか、キッドは能天気に微笑んだ。
「あ、そっか。いつも悪いね。 んじゃ返却よろしく頼むよ。
オレはお言葉に甘えて、お先に失礼させてもらうからさ。新一も早く帰ってこいよ?!」
ウインク一つ、キッドは言いたい事だけ言うと、ビルの屋上から身を投げた。
一人屋上に残った新一は、重苦しい溜息をついて、月を見上げる。
さて、今夜の中森警部への言い訳は何にしようかと、考えをめぐらせながら。
+++ +++ +++
新一が家路をたどるのは、濡れていたアスファルトは乾き始めていた頃だった。
ようやく見えてきた我が家に明かりが灯っているのを確認し、妙に安心した心地になっているのを新一は感じた。
・・・良かった。今度はアイツ、まっすぐ家に帰れたみたいだな。
今までは、しなくて良かった心配をするようになった自分を新一は苦笑する。
両親不在で一人暮らしが長い新一にとって、誰かが待つ家に帰るというのは、かなり新鮮なことだった。
いや、ただ新鮮なだけではない。
自宅で待っている人間を考えれば、常識ではありえないことである。
まさか、探偵の家で怪盗が待っているなんて。
事の起こりは今から3ヶ月ほど前。
それまでも、幾度か現場で顔を合わせていた二人であったが、ひょんなことから実は追っているモノが同じだということを知った。
それぞれの立場から、その目的と手段は違ってはいても。
彼らは同じ『組織』を追っていたのだ。
それがわかった時、共同戦線の話を持ちかけてきたのはキッドの方だった。
「・・・なぁ、名探偵。手っ取り早く事を進めるために、オレ達、手を組まない?」
「・・・は?」
目を丸くした新一に、キッドはいつもの人を食った笑みを浮かべてこう言ったのだ。
「お互いに利用できるモノは、利用しないとね。」
確かにそれは一理あった。
組織を追い続けてはいるものの、結局は手詰まりである新一にとって、組織にマークされている『怪盗キッド』の存在は魅力的ではある。
キッドといれば、必然的に組織との遭遇率は高くなるからだ。
本来なら、日本警察の救世主とまで言われている彼が、あの天下の大怪盗と手を組む事など道徳的にはあってはならないことなのだが。
あいにく、新一はどこまでも『探偵』に過ぎなかった。
真実を求めるために、彼もまた手段を選ばない無鉄砲さを秘めている。
そういう意味では、この二人は良く似ていた。
こうして、キッドの言うとおり、新一はその申出を受ける事にしたわけだ。
だが。
「だからって、何でオメーがオレんちにいるんだよっっっ!!!」
「いや、だって。一緒に住んでた方が何かと便利かと思って。」
「・・・す、すすす、住むぅ??! お、お前、まさか、ここに居座る気かっっ?!!」
「そうv 仲良くやろうな。名探偵♪」
手を組む・・・という言葉のウラには、お互いの解釈に微妙なズレがあったようで。
新一が少し判断を早まったかと思った時にはもう遅い。
探偵と怪盗の奇妙な同居生活は既にスタートしてしまっていたのだった。
こうして、二人は結託して組織壊滅に身を乗り出したわけだが。
その際に、いくつかルールを決めておくことにした。
ルール : その1
お互いの手札はすべて見せる事
これは言うまでもないことである。 これがなくては手を組んだ意味が無い。
お互いの情報交換は必須だからだ。
ここで、新一はかつて自分が例のクスリで幼児化し、『江戸川コナン』となっていたことを暴露した。
逆にキッドは、『パンドラ』の事、そして彼の父、初代キッドが組織の手によって暗殺されたことを
告白した。
おまけに。
「・・・で、オレの名前は黒羽快斗。快斗でいいぜ?よろしく、新一♪」
などと、ご丁寧に本名まで明かしてくれた。
新一は思わずあっけに取られてしまったが、やがて我を取り戻すと呆れたように言った。
「・・・オメー、バカ? いつ、オレの気が変わって、オメーを警察に売るかもとか思わねーの?」
すると、目の前の怪盗は、それは困るねぇと、ちっとも困った風でなく笑った。
「じゃあ、とりあえず、口止め料を払っておこうか。」
「何だ?なんかウマい情報でもあんのかよ?」
「いや、カラダで払おうかなーってねv」
「・・・!!!!いるかーーーっっっ!!!!」
ルール : その2
組織へのアプローチの仕方は各自自由で、お互いに口出しはしない事
要するに共有するのは組織に関する情報だけで、例えば掴んだ情報をもとに組織に
どう仕掛けるかは、それぞれの勝手だということだ。
そう考えれば、二人で手に手を取って組織を叩くという本当の意味での共同戦線ではない。
確かに、二人の目的は組織壊滅という点では同じではある。
が、その『壊滅』という言葉の意味合いまでが、まったく一緒であるかは謎なのだ。
組織を警察の手に委ね、社会的に制裁を下すことなのか。
それとも。
奴らと同じような手段で、組織を闇に葬り去ることなのか。
そこまではお互いに話してもいないし、聞いてもいなかった。
そして、ルールその2に付随するようにもう一つ。
ルール : その3
この共同戦線は、お互いが組織に関する最も有力な情報を得るまでとする事
つまり、ここで最終決戦は個人でやるとはっきり名言しているわけなのだ。
と、組織に関することの取り決めは以上だが、同居する上での生活のルールもあったりする。
それは同居が始まって間もない頃だった。
新一が新聞を読みながら一人で夕食を取っていた時、帰宅してきた快斗は大声を上げた。
「新一っっ?!それってまさか夕食か?!何、食べてんだ?!」
「・・・何って。お茶とヨーグルト。」
「具合でも悪いのか?」
「え?別に。 ただ面倒臭かったから・・・・。」
何て事も無い風に新一がそう答えると、快斗はバンと机を叩いてこう言った。
「今日から食事はオレが作るっっ!!これから一緒に食べるから待ってろよ?!」
そうして、気がついてみれば家事全般、居候である快斗が引き受けているようになり。
ま、それで帰って新一も過ごしやすくなったので、敢えて口出しすることもなく。
「・・・・ほんと、主婦みたいだよな。」
意外に所帯じみた怪盗の姿を思い、新一はクスリと笑うと玄関をくぐった。
+++ +++ +++
「おかえり、新一。」
「・・・おぅ。」
「メシ、できてるよ。食うだろ?あ、それとも先にシャワーにする?」
キッチンからひょっこり顔を出してそう微笑む快斗に、新一はげんなりする。
「・・・・オメーな。あんまり楽しそうにそんなこと言うな。気色悪いだろ?」
「え?何で?いーじゃん。新婚ゴッコみたいでさ。」
それを聞いてますます疲れを感じた新一は、マジメに相手をするのをやめ、
「・・・・とりあえず、メシ。 ハラ減ったから。」
と、だけ言って、自室に着替えに向かう。
背中で、快斗がご機嫌にラジャー♪と言ったのが聞こえた。
同居してしばらく。
『怪盗キッド』という仮面を持った、この黒羽快斗という人間本人が、実は結構お調子者だということを新一は知った。
あの白い怪盗の時の紳士っぷりは、『なんちゃって』でかなりのタヌキであることは
とうに見抜いていたというものの。
その素顔は意外に人なつっこく、他人を警戒させることがない。
何より、新一の領域にも違和感無しにすんなりと入り込んできて。
パーソナルスペースを乱されることを、あまり好まない新一にとっては珍しく、
この居候の存在を容認していたのだった。
ただ一つ、問題なのは。
純粋にスキンシップが好きなのか、悪質な冗談なのかは知らないが、快斗が新一にちょっかいを出してくることで。
「・・・・ほんとにフザけたヤツだよな。」
いきなりあの怪盗に抱きつかれたりするぐらいでは、悲しいけれど、もうビクともしなくなった自分に新一は溜息をついた。
そうして。
ラフな部屋着に着替えて食卓についた新一の目の前には、いつもよりなぜか豪勢な料理の品々が並んでいた。
「・・・・・こんなに食えねーよ。」
「あ、やっぱり?実は考え事しながらやってたら、つい作りすぎちゃってさ。」
サラダを取り分けながらにっこり笑う快斗に、新一はこれは何かあったなと感づいた。
とりあえず、無言で快斗が差し出す小皿を受け取ってから、新一は真っ直ぐに目の前の少年を見つめた。
「・・・何があった?」
そう言ってやると、快斗はニヤリとしてからこう言った。
「ラブレターもらったんだよ。」
「・・・ラブレター?」
「そ。オレがいくつか持ってるメルアドの中でさ、情報屋に公開してるフリーのがあるわけ。
・・・で、さっきメールチェックしてみたら、魅力的なメールが来てた。」
「・・・魅力的?」
新一が聞き返すと、快斗はそれににっこり頷いて、いただきまーすと食事を取り始める。
つられて新一も食べ始めるが、箸を進めながらも会話は終わらない。
「情報屋からのネタか?またビッグ・ジュエルの話でも?」
けれども、快斗はそれには、いいやと首を横に振った。
「今回のは、『パンドラ』絡みじゃないんだ。むしろ、オレって感じ。」
「・・・は?」
「内容、見たい?」
「見せろ。」
快斗は立ち上がるとリビングのテーブルの方へ行き、メールをプリントアウトしたらしき物を持って、新一に手渡すと再び食事を続ける。
一方、フォークを口に突っ込んだまま、それを受け取った新一は僅かに目を見開いた。
「・・・何だ、コレ? 暗号?!」
「・・・そう。読める?『名探偵』?」
クスリとそう笑う快斗に新一はムっと睨みを効かすと、ほんの数分の間、その暗号文をじっと見つめた後、溜息をついて見せた。
「・・・日時を指定して、お前を呼び出してるのか・・・。用件は書いてないけど。」
「さすが!」
「何言ってやがる。単純な単文字換字暗号じゃねーかよ。暗号の基本だろ?
ホームズの『踊る人形』と一緒。 文字の発生頻度から解読なんて簡単にできんだよ。」
「そりゃそうだ。」
『名探偵』をも悩ます暗号を創るただ一人の『怪盗』は、人事のようにそう笑った。
「ま、新一の言うとおり暗号自体チョロイし、これが例えば『果たし状』だとして、
別にこの手の類をもらうことも、そう珍しい事じゃないんだけどさ。
・・・・・・気になるのは、差出人の名前。」
「・・・・《RUM》 (ラム)。」
その名を読みながら、新一の蒼い目が鋭く光る。
それを見て、快斗も不敵に笑った。
「そ。 《RUM》はラム酒。 組織の奴らに共通する酒のコードネームかもしれない。」
+++ To
be continued +++
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