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10  殺人予告
 

 

 

「ほぉ〜・・。それはたいへんだったのぉ、新一。」

「たいへんなんてもんじゃねーよ、博士。」

例によって例のごとく、阿笠邸での夕食を終えたオレは、コーヒーをすすりながら
この間の「TRUE BLUE事件」について、とくとくと話して聞かせた。
(もちろん、変な奴に襲われそうになったとこはしっかり省いて。)
だって、ポイントはそこじゃない。
あの気障なコソドロ、怪盗キッドがいかに失礼な奴かというところが重要なのだから。

すると、オレの話を大して興味もなさそうにしていた灰原が、ぽつりと呟いた。

「さっきから、口を開けば、怪盗キッドのことばかりね・・・。」

「な、何だよ?それ!!」

灰原のからかうような視線にオレは噛み付いた。
それじゃ、オレがキッドに夢中な奴みたいに聞こえるじゃねーか!
オレは今、キッドに対しての怒りを露に話を展開していたのに、どう考えたら
そんな言葉が出てくるんだ?

「わからないなら、いいのよ。」

クスリと笑ってそれだけ告げると、灰原は自分のマグカップを持って席を立った。
そのままリビングを出て行こうとして、ドアの前でふと足を止める。

「・・・彼が組織とどういう関係かは知らないけど・・・。
下手に関わると、あなたまでまた厄介な事に巻き込まれることになるわよ?」

それだけ言って、パタン、とドアは静かに閉じられた。

何だよ?灰原の奴・・・。
キッドにこれ以上、関わるなって言ってんのか?
いや、オレだってできれば関わりたくない気持ちでいっぱいだけどさ。
だって仕方ねーだろ?今のところ組織との接点がアイツしかないんだから。

オレは灰原の出て行ったドアから、再び目の前のコーヒーに視線を戻した。

「組織の話が絡むと、哀くんがナーバスになってしまうのも無理ないじゃろ。気にするな、新一。」

わかってるよ、そんなこと。
オレは博士の言葉に頷いてみせると、博士は何か思い出したようにポンと手を叩いた。

「そうじゃ、新一。今週末、みんなでバーべキューにでも行かんか?
少年探偵団の子供達から前から、頼まれてての。
よければ、蘭くんも誘って、新一も一緒にどうじゃ?」

・・・ま〜た、バーべキューかよ。よくやるな。
コナンの時にもよく連れて行かれたが、今時のガキはずいぶんと
アウト・ドア派なもんだ。

「悪いけど、オレはパス。仕事なんだ、週末は。」

「何じゃ、事件でもあったのか?」

心配そうに訊ねる博士に、オレは笑顔を返した。

「いや、これから起こすんだってさ。」

 

 

*      *      *

 

 

予告状を出して犯行をするなんて、今時そんなレトロなマネをするのは
アイツしかいないと思っていた。

が、しかし。

今回、警視庁に届いたのは差出人不明の殺人予告状。

そこに記されていたのは、キッドのような難解な暗号などではなく至ってシンプルに
ターゲットの人物の名前、そして実行日などだった。

「このターゲットにされている人物について周辺調査を行ったんですが、
かなり胡散臭いですよ?」

高木刑事がペーパーを見ながら、目暮警部に報告する。

「大田原 幹夫(54歳) 表向きは大手建設会社大田原組社長ですが、他にも事業を手広く展開していて、金融会社なんかもいくつか持ってます。
その中には、暴力団とつるみがあるとうわさされるようなものもあります。
かなり強引な手腕の持ち主で、ここ最近急成長を遂げていますが、彼の周りには
倒産・破産・自殺・一家心中なんて話がごろごろしてますから。」

「ふむ・・・。大田原氏を恨んでいる人間は大勢いるということか・・・。」

警部が顎に手を添えて考え込んでいるその横で、オレは予告状を見せてもらった。

「予告日の大田原氏の予定は、どうなっているんですか?」

オレがそう聞くと、高木刑事が別のペーパーをくれた。

「それが、ちょうどその日が大田原氏の55歳の誕生日らしくてね、なんと犯行時刻は豪華客船でパーティの最中なんだってさ。」

「しかも今日、わしと高木君で大田原氏に会いに行ってきたんだが、
パーティを中止する気はおろか、自分でボディ・ガードを用意するから警備までいらんと言う始末だ。」

なるほど。警察より優秀なボディ・ガードを金で雇った方がいいってことか。

「実際、同じ予告状が大田原氏のところにも届いているはずなのに、彼から警察への届出はなかったしね。警察を信用していないんだよ。」

少し憤慨した様子で語る警部達の様子から、大田原氏の人間性がうかがえる。
ま、確かにあんまり好感の持てる人物じゃなさそうだけど。見るからに悪人面だし。

「まぁ、そうは言ってもこんなものが警察に届いちゃ、無視するわけにもいかんだろ。今回は無理矢理にでも乗船させてもらうよう話はつけてきたがね。」

目暮警部はそう言って、タバコに火をつけた。

オレはそれに無言で頷いて、高木刑事の用意してくれた資料に目を通す。

 

と、そこへ息を切らして、別の刑事がやってきた。

「た、たいへんです!!目暮警部!!」

「なんだね?騒々しい・・・。」

警部が煙を吐き出しながら言うと、その刑事はオレ達の顔を見渡しながら言った。

「キッドです!!怪盗キッドの予告状が届いたんです!!」

なにぃ?!オレは目をむいてその刑事を見た。

すると、高木刑事が呆れたように言葉をつなぐ。

「キッドなら、二課が担当でしょ?今、うちは別の事件で忙しいんだから。
あ!もしかして暗号解読に工藤君を引っ張り出そうっていうんなら、ダメだよ。
うちの方が先にお願いしてあるんだから!!」

慌てて高木刑事がオレをガードする。
いや、別に暗号解読くらいなら、すぐに協力できないこともないんだけどさ・・・。

けれど、その刑事は首を横にブンブンと振った。

「暗号は、さっき中森警部が解きました!」

へぇ、やるじゃん!

「それが・・・!今回のキッドの獲物が大田原組の社長の持つダイヤモンドで・・・」

なんだって?!
大田原組って、大田原 幹夫氏じゃねーか!

刑事はそこまで言って、キッドがよこした予告状のコピーをオレ達に見せた。

そこには、なんと、大田原氏の誕生日パーティの会場でダイヤを盗むということが
書かれてあった。

 

つまり、その日は殺人予告と、キッドの予告が重なっちまったってことで・・・。

あまりのことに警部達はあんぐり口を開けたままだった。

 

・・・ったく、この忙しいのになんて余計なマネをしてくれるんだ、アイツは!!
どこまでもオレたちの相性は最悪らしい。

ああ・・・。アイツが絡んできた事で、今回の事件がまた厄介な方向へ行きそうだという
いやな予感が、オレの頭を過ったのだった。

 

 

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久しぶりのBEST〜シリーズ再開!!
さぁ、新しい事件の始まりだ!
今度こそ、二人の仲が少しは進展しますように(笑)

2001.06.24

 


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